日本惑星科学会秋季講演会予稿集
日本惑星科学会2003年秋季講演会予稿集
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オーラルセッション2 10/8(水)10:45~12:00
コンドリュールの全岩Si/Mg比頻度分布の測定と形成年代分布の推定
*友村 晋永原 裕子橘 省吾木多 紀子
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p. 6

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抄録

友村 晋・永原裕子・橘 省吾・木多紀子はじめに
 始原的隕石コンドライトの主要構成物質であるコンドリュールは,原始太陽系で固体前駆物質が溶融してできたと考えられているが、具体的な成因については未解決な部分が残っている。Tachibana et al. (2003) は、消滅核種26Alの存在度から求めたferromagnesianコンドリュールの形成年代と全岩化学組成、特に全岩Si/Mg比に相関があること(Siに富む程年代が若い)を示した。これはコンドリュール成因論への重要な制約となるものと考えられるが、より詳細な議論のためには、コンドリュールの全岩化学組成および年代情報を、系統的・統計的に求めていく必要がある。今回我々は、コンドリュールの全岩化学組成のデータを統計的に集めることを目的に、非平衡普通コンドライト薄片から無作為に選んだ47個のコンドリュールの全岩化学組成を分析し、全岩Si/Mg比の頻度分布を求めた。また、Tachibana et al. (2003) が示した年代と全岩Si/Mg比の相関から、コンドリュールの年代分布の推定も行った。
試料・分析
 分析に用いた試料は非平衡普通コンドライトBishunpur (LL3.1) で、Tachibana et al. (2003)でコンドリュールの年代と化学組成の相関が得られた試料である。Bishunpur隕石薄片中のコンドリュール47個を無作為に選び,それらの岩石学的、鉱物学的記載をSEMを用いておこなった。全岩化学組成分析はEPMAを用い、1つのコンドリュールにつき等間隔で約500ポイントの分析を行い、その平均値を全岩組成とした。その際金属鉄や硫化鉄、試料表面の傷や欠落部分を測定したデータは除き、珪酸塩成分のデータのみを用いた。
結果および考察
 47個のコンドリュールの内、44個はオリビンや輝石の斑晶を含むferromagnesianコンドリュールであった(残り3個はほぼ球形でガラス質のAl-richコンドリュール)。オリビン・輝石斑晶の量比や、斑晶中のFeO含有量は多様であり、全岩化学組成はJones and Scott (1989)、 Jones (1990, 1994, 1996) やTachibana et al. (2003)が報告したferromagnesianコンドリュールの組成範囲をほぼカバーする。また、ferromagnesian コンドリュール中のNa、Mnなどの揮発性元素の存在度は、Tachibana et al. (2003) などで報告されているように、Siの存在度と正の相関を示した。測定したferromagnesianコンドリュールの全岩Si/Mg比(C_I_コンドライトのSi/Mg比で規格化)は、Si/Mg=0.63-1.49で、Si/Mg=1.0-1.1にピーク(10個)を持つほぼ左右対称の頻度分布を示すことがわかった。
 求めたferromagnesianコンドリュールの全岩Si/Mg比の頻度分布を、Tachibana et al. (2003)が示した年代と全岩Si/Mg比の関係式に当てはめ、ferromagnesianコンドリュールの年代分布を推定した。得られたferromagnesianコンドリュールの年代分布は、CAI形成後1.43-2.53Maの幅を持ち、ピークが1.9-2.0Maのほぼ左右対称な分布である。

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© 2003 日本惑星科学会
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