日本惑星科学会秋季講演会予稿集
日本惑星科学会2003年秋季講演会予稿集
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オーラルセッション1 10/8(水)9:15~10:30
系外惑星の大気力学
*山中 大学
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p. 99

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抄録

Hot Jupiterと呼ばれるものに代表される太陽系外の様々な惑星の発見は、GFD(地球流体力学)に新しいカテゴリーの問題を提供しつつある。これまでのGFDは、質量、角運動量、エネルギーの全てにおいて閉じた惑星システム内の大気(海洋)力学であり、一義的にはエネルギー(放射)収支で規定される子午面内で不均一な温度場と、自転方向の大気運動(角運動量)との間の平衡状態を論じるものであった。これまでの問題では、温度場は主星(および惑星内部)との放射収支で与えられるので、主星がどのような距離からどのような放射を発していても、それとバランスするような風速場を求めることができた(ここでは簡単のため、子午面循環による角運動量やエネルギーの再分布を無視している)。しかし、例えばhot Jupiterの場合は自転(ガス惑星の場合は大気角運動量にほかならない)が公転とシンクロナスであると考えられており、従って大気角運動量には主星との間に天体力学的な束縛条件(Kepler第三法則)が新たに要請される。放射収支で決まる風速場が、この天体力学的条件を満たすためには、hot Jupiterは主星に対して任意の位置に存在することは許されないことになる。これはほんの一例であるが、このように惑星系全体でみればミクロな力学(熱力学よりは大きいスケールなのでメソというべきかもしれないが)であったGFDには、巨視的な天体力学との間の連立系を構成することによって、新たな理論的諸問題が生まれてくることになる。また、天体力学的な惑星系形成論の側においても、本来ミクロ(メソ)なGFDとの連立によって要請される新たな条件が与えられるはずである。今回は、今後展開する予定の具体的な諸問題を解く前の導入編として、そのような新たな力学系の一般論について論じておきたい。

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