主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第4回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第56回 日本理学療法学術大会
会議名: 第8回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: Web開催
開催日: 2021/11/13
p. 140
【目的】
水中運動は水の浮力を用いて行うため身体への負担が少ないこと、また効果が大きいことから、近年、各世代で健康増進の手段として注目されている。水中運動の効果は、肥満軽減、筋力向上、呼吸循環機能向上等の目的で身体機能に対する効果の報告が見られる。しかし、主観的な指標となる心理面の評価を行った報告は、我々が探索した限り見当たらなかった。そこで今回、地域高齢者を対象とし水中運動における心理的効果(主観的健康観、気分)をアンケート調査から検証した。
【方法】
対象はA水泳場を利用する60歳以上の高齢者67名(男性36名、女性31名)とした。調査期間は2か月間とし、アンケート調査を行った。項目は、基本情報、継続期間、疼痛部位、主観的健康観、気分とする。
主観的健康観は「1. とても健康である」「2. 健康である」「3. あまり健康ではない」「4. 健康ではない」の4段階、気分は5段階のFace Scealを用いた。統計解析にはSPSS22(IBM)を用い、有意水準は5%未満とした。統計解析は以下のように行った。
1. 主観的健康観、気分の項目の平均値を用いて、運動種類別(水中ウォーキング、水泳、両方を実施したもの)に分け、それぞれ対応のあるt検定を実施した。
2. 疼痛部位数と主観的健康観および気分の関係は、相関係数を用いて検証した。
【結果】
有効回答は67名(回収率86.9%)であった。
1. 水中運動前・後比較において、主観的健康観では、水中ウォーキングp=0.575、水泳p=1.000、両方p=0.382であり、それぞれ有意な改善は認められなかった。気分においては、水中ウォーキングp=0.425、水泳p=0.032、両方p=0.203であり、水泳のみ水中運動後に有意な改善が認められた。
2. 疼痛部位数と主観的健康観および気分の関係において、主観的健康観ではr=0.33、気分ではr=0.06であり、主観的健康観にて相関がみられた。
【結論】
1. 水泳を行うことで、心理的側面(気分)にポジティブな影響を与える可能性があることが示唆された。
2. 疼痛部位数と主観的健康観には相関があり、疼痛部位数が増加することで健康に対する主観的評価が低下する傾向が示唆された。なお、疼痛部位数の項目において、「0~1」と回答した人が80%以上であり、水中運動を実施する地域高齢者は主観的に「健康である」ことが示唆された。
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき調査を行った。アンケートは個人の特定ができないよう、すべて無記名で実施した。