主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合, 第58回 日本理学療法学術大会
共催: 第6回 日本産業理学療法研究会学術大会
会議名: 第10回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 函館市民会館・函館アリーナ(函館市)
開催日: 2023/10/28 - 2023/10/29
【背景】
近年遺伝情報の解析の進歩に伴い、因果推論に遺伝情報を活用したメンデルランダム化法 (MR)という新規の解析手法が登場した。観察研究では切り離せない交絡要因の影響を少なくできる手法であり、今回、血中25-ヒドロキシビタミンD濃度と全がんリスクおよび大腸がんリスクとの関連についてメンデルランダム化法を用いて検討したので、手法とともに紹介する。
【方法】
MR法は操作変数法の一種であり、操作変数として血中25-ヒドロキシビタミンD濃度と関連する一塩基多型 (SNP)を系統的に選択した。共同研究基盤であるJ-CGE(Japanese Consortium of Genetic Epidemiology studies) を活用し、SNPとビタミンD濃度の関連、およびSNPと全がん (症例対照各 4543/14224名)および大腸がん (症例対照各7936/38042名)との関連について日本人における推定値 (β値)を求めた。その後 Rの“TwoSampleMR”パッケージにてオッズ比を算出した。
【結果】
2020年12月で7SNP、2022年9月で110SNPが選択 された。これらによるビタミンD濃度の分散説明率は、各3.7%、 6.7%であった。様々なMR解析の方法を用いたものの、遺伝的に予測される血中25-ヒドロキシビタミンD濃度と全がん、大腸がんとの間には、いずれにおいても有意な関連は認められなかった。7SNPにおけるビタミンD濃度2倍あたりのオッズ比は、逆分散加重法では全がんが1.05 (95%信頼区間[CI]:0.83-1.34)、大腸がんが1.10 (95%CI:0.82-1.48)、MR-Egger法では全がんが1.00 (95%CI:0.66-1.52)、大腸がんが0.86 (95%CI: 0.56-1.33)であり、110SNPを選択しても同様に有意な関連は認められなかった。
【考察】
今回実施したMR法においては、ヨーロッパ系住民を対象としたこれまでのMR解析と同様に有意な関連を認めないという結果であったが、観察研究においては日本人で全がんと関連を認めていることから、非線形の関連の検討やサンプルサイズの増加など更なる検討の余地があるといえる。
【結論】
今回のメンデルランダム化法を用いた検討では、25-ヒドロキシビタミンDレベルと全がん、大腸がんの間に有意な関連は確認されなかった。
【倫理的配慮】
国立がん研究センター倫理委員会の承認を得て (2011-044番)実施された研究である。