日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第43回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 43_2-C-EL03-2
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教育講演
がん関連血栓症のマネジメント
*志賀 太郎
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抄録

近年立て続けに報告された,がん関連静脈血栓症(CAVT) に対する低分子ヘパリン(LMWH)と各直接作用型経口抗凝固薬 (DOAC) とを比較した臨床試験,Hokusai VTE Cancer (エドキサバン) 試験,SELECT-D (リバーロキサバン) 試験,そしてCaravaggio (アピキサバン) 試験において,DOACのLMWHに劣らない臨床結果が得られた事から,ここ数年におけるCAVTへのDOACの使用拡大は目覚ましかった.DOACの治療効果,また,内服で外来管理が可能となるその簡便さについて,どの臨床家もそのありがたさを感じてきただろう.さらに,欧米では,CASSINI (リバーロキサバン) 試験とAVERT (アピキサバン) 試験の結果からCAVTに対する一次予防を目的としたDOACを推奨する内容がASCOの2019年ガイドラインで記載され,DOACのこの分野における立ち位置はLMWHを超えた.実際に,これまでLMWHが優先的に記載されてきた各種ガイドラインだが,最新のCHESTガイドラインではLMWHよりもDOACをまずは推奨される内容に記載が変わっている.DOACの安全性について,Hokusai VTE Cancer,SELECT-Dで報告された各DOACによる消化管出血,泌尿器科関連出血への懸念について,Caravaggioにおいてアピキサバンによるそのリスクへの安全性向上の期待がもたれる結果が大きな話題となったが,筆者の個人的見解においては,CAVT治療としていずれのDOACでも消化管出血,泌尿器科関連出血のリスクがあり,特定のDOACでは安全という考えは抱いていない.これら出血リスクについてはDOAC class effectとして理解する事が無難であろうと筆者は考えており,今後もおそらくこれらの内容は変わる事はないであろう.本セッションでは,そして良く話題にあげられる,患者の臨床的背景,特性に応じたCAVTマネジメント,また可能となればトルソー症候群のマネジメントについても,筆者私見を交えてお話をしてみたいと考えている.

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