日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第43回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 43_3-C-P-121
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一般演題 ポスター
精神科患者さんのための服薬支援ツール開発に向けた医療者・患者のニーズ調査
*滝 伊織山崎 太義安藤 睦実雁谷 有紗熊坂 瞳美大津 実祐大塚 幸夢希永井 努黒沢 雅弘肥田 典子
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抄録

【背景】電子版お薬手帳とは、患者の所有するスマートフォンなどに薬剤情報を保管するもので、紙のお薬手帳と同様の活用を目的とされている。各社よりスマートフォン向けのお薬手帳アプリ(以下、電子版お薬手帳)がリリースされており、患者の視点ではどのアプリがよいか選ぶことが困難であり、利用率が低い。そこで、より有用な電子版お薬手帳の開発と利用率の向上に向け、まずは本研究施設に併設する精神科病院の患者及び医療者に焦点を当ててお薬手帳へのニーズを明らかにすることとした。

【目的】本研究は、精神科患者の服薬支援ツールにおける医療者側と患者側のニーズを明らかにすることを目的とする。

【方法】医療者および患者を対象にアンケートを作成した。本研究への参加に同意を得た者からアンケートの回答を得た。

【結果・考察】アンケートの回収ができた医療者95名、患者198名を対象として集計を行った。その結果、患者の84%が紙のお薬手帳を使用していた。理由として「もらったから」「電子版を知らない」といった意見が多く挙げられた。また現在紙のお薬手帳を使用しているあるいはお薬手帳自体を使用していない患者の70%以上が電子版お薬手帳を「知らない」と回答したことより、電子版ではなく紙のお薬手帳を使用している理由として、存在を知らないことが理由の一つと考えられた。また、患者側の62%はお薬手帳を「90%以上持参している」と回答したのに対し、医療者側は患者の持参率として「90%以上」と回答した人はわずか8%だった。お薬手帳を活用できていないと感じる理由として医療者・患者ともに「提示しない・されない」が最も多く、その活用についても問題点が浮き彫りとなった。電子版お薬手帳のメリットとして、医療者側は「長期間の情報管理」が最も多く、患者側は「持参率の向上」が最も多かった一方、デメリットとしては、共通して「スマホが必須である」「電源が切れる恐れ」が多かった。電子版お薬手帳は媒体の電源が切れると閲覧できないことや、精神科ならではの理由として、入院時にスマートフォンが持ち込み不可であることが挙げられた。

【結論】患者と医療者の双方が情報共有しやすいシステムや媒体についての検討、診療科によって特徴的な機能を検討していく必要がある。

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