日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_1-C-O02-3
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一般演題(口演)
医療機関における治験データの二次利用への対応
*川上 貴裕長瀬 克彦田中 祐子嶋田 努崔 吉道
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抄録

【目的】

人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針及び同ガイドラインにおいて、研究対象者から取得された試料・情報を、研究対象者等から同意を受ける時点では特定されない将来の研究のために用いられる又は他の研究機関に提供する可能性がある場合、同意を受ける時点において想定される内容並びに実施される研究及び提供先となる研究機関に関する情報を研究対象者等が確認する方法を説明すべきである旨が定められている。

企業が実施する治験においても、データや試料の二次利用について計画書や説明文書に記載されているものの、同意を受ける時点では特定されない将来の研究に使用する旨が記載されていることが多く、被験者の拒否の機会を設ける等、指針を踏まえた本院IRBの見解とは異なる例も発生している。

このため、本院で受託している企業治験の事例を参考に、指針の解釈に関する企業と医療機関との違いについて検討した。

【方法】

令和5年7月以降に本院IRBで審議された18試験について、説明文書における二次利用に関する記載、本院としての対応とその結果を調査した。

【結果・考察】

18試験のうち、二次利用についての記載がある試験は10試験であり、将来の具体の研究内容については記載されていた試験はなかった。また、二次利用に関する同意の選択肢がない試験については、本院担当者の指摘により選択肢が追加され、二次利用について同意しなければ治験への組入れは不可とされていた試験も存在したが、協議の後に二次利用は行わないことされた。さらに、将来の研究に対して再度同意を取得する旨が記載されている試験はなく、一部が指摘により追記された。

治験依頼者と本院との間で倫理指針における二次利用の記載に対する理解・解釈に差異があり、説明文書への記載内容も治験依頼者ごとに対応のばらつきが認められた。日本製薬工業協会からは「医薬品開発及びデータ二次利用における個人情報保護に関する留意点」が示されているものの、個人情報の定義に関する解釈、あるいはどこまでが同意の範囲であるかの解釈の相違があり、当該対応に差異が生じた可能性がある。

【結論】

治験データの二次利用について、治験依頼者と医療機関との間で倫理指針への対応に温度差が認められた。今後、関係者間の意見交換を踏まえ、共通認識のもとで適切な二次利用を推進していく必要がある。

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