日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_1-C-S04-2
会議情報

シンポジウム
消化管癌治療における免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の位置づけ
*室 圭
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

近年、消化管癌に対してICIを用いた多数の有望な臨床試験結果が報告され、標準治療が大きく塗り替わりつつある。

食道癌:ATTRACTION(AT)-3(ニボルマブ (Nivo) vs. 化学療法)、KEYNOTE(KN)-181(ペムブロリズマブ (Pembro) vs. 化学療法)からICI単剤が転移性食道癌の二次治療の、さらに、KN-590から化学療法(5-FU+シスプラチン)+Pembro併用療法、CheckMate(CM)-648から5-FU+シスプラチン+Nivo併用療法、ならびにNivo+イピリムマブ (Ipi)併用療法が、転移性食道癌一次治療の標準治療として確立された。CM-577では、食道癌の術前化学放射線療法後に根治切除術を行い、術後Nivo療法がプラセボに対する無病生存期間の有意な延長を示し、周術期治療での標準治療となった。

胃癌:AT-2(Nivo vs. プラセボ)から、Nivo単剤が転移性胃癌の三次治療以降の標準治療となった。さらに、AT-4やCM-649から、化学療法(CapeOX, FOLFOX, SOX)+Nivo併用療法が一次治療の標準治療として確立された。HER2陽性胃癌に対する一次化学療法にトラスツズマブとPembro併用療法の試験(KN-811)が行われ、奏効割合の有意な向上、全体集団の無増悪生存期間とCPS1以上集団における全生存期間の有意な延長が認められた。日本での承認が期待される。KN-164, 158から、マイクロサテライト不安定性 (MSI-H) 固形癌の、二次治療以降におけるPembro単剤の有効性が証明され、化学療法既治療の大腸癌、胃癌を含むMSI-H固形癌に対してPembro単剤が標準治療となった。2023年ESMOでは、MSI-H胃癌の一次治療に対するNivoと低用量Ipi併用療法のWJOG医師主導治験(NO LIMIT)の高い有効性の結果が報告された。周術期における化学療法+ICIは複数試験が行われ、AT-5、KN-585ではprimary endpointを達成出来なかったが、MATTERHORNではFLOT+デュルバルマブ群の病理学的完全奏効の有意な向上が得られ、今後primary endpointであるevent-free survivalの結果が待たれる。

MSI-H大腸癌:先述した既治療例でのPembro単剤に加えて、Nivo単剤、Nivo+Ipiが承認されている。一次治療ではKN-177(Pembro vs. 標準的化学療法)から、MSI-H大腸癌の一次治療としてPembro単剤が標準治療として確立した。ICIは消化管癌の治療体系を大きく変革した。今後は、各種併用療法の開発、バイオマーカーのエビデンス構築が期待される。

著者関連情報
© 2023 日本臨床薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top