主催: 日本臨床薬理学会
関節リウマチ(RA)に対する治療は、生物学的製剤の登場により著しい発展を遂げている。
1998年にエタネルセプトが米国で初めて承認されて以来、多くの生物学的製剤が上市されてきた。本邦では2003年にインフリキシマブが承認されたのを皮切りに、現在までに計6剤のTNF阻害薬、2剤のIL-6阻害薬、1剤のT細胞選択的共刺激阻害薬が承認され使用されている。また、生物学的製剤と同等の効果を有するJanus kinase (JAK) 阻害薬が2013年に承認され、RA治療の選択肢はさらに拡大した。現在までに計5剤のJAK阻害薬が承認されている。
RA治療では、まずメトトレキサート(MTX)もしくは従来型の抗リウマチ薬を使用し、その効果が十分でない場合に生物学的製剤またはJAK阻害薬の使用を考慮することとなる。どちらを選択するかについては、「関節リウマチ診療ガイドライン2020薬物治療アルゴリズム」では、MTX併用・非併用のいずれの場合も長期安全性、医療経済の観点からJAK阻害薬よりも生物学的製剤の使用を優先することが推奨されている。また、MTX非併用の場合は、生物学的製剤ではTNF阻害薬よりもnon-TNF阻害薬(この場合はIL-6阻害薬)を優先することが推奨されている。
実臨床におけるこれらの使用状況を全国規模のRAデータベース"NinJa"でみてみると、生物学的製剤は約28%でここ数年横ばい、JAK阻害薬は年々増加傾向で現在約6%である。選択される薬剤は経年的に変化しており、MTXの併用・非併用や、患者の年齢や背景(高齢者、挙児希望の有無)などによっても大きく異なっている。いずれも高額な薬価が導入や継続使用の障壁となることが少なくないが、減量投与や投与間隔延長などの工夫や、バイオシミラーの使用などにより、以前よりも使用しやすい状況ではないかと思われる。
安全性については常に懸念されるところだが、例えばTNF阻害薬使用開始当初にみられた結核については、スクリーニング検査や予防投与などの徹底が奏功し著しく減少している。JAK阻害薬使用による帯状疱疹の増加は悩ましいところであり、悪性腫瘍やDVTなどについてはさらなるデータの蓄積が望まれる。
本講演では、実臨床における生物学的製剤およびJAK阻害薬の具体的な使用状況を紹介するとともに、今後登場が期待される新たな治療についても少し触れたいと考えている。