日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_3-C-O17-2
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一般演題(口演)
静岡県治験ネットワーク参加施設を対象とした一括審査に関する現状調査
*清水 幹裕小田切 圭一名波 章子乾 直輝
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抄録

【目的】

 人を対象とする生命科学・医学研究に関する倫理指針(倫理指針)では、多機関共同研究を行う際に、原則として一の倫理審査委員会による一括した倫理審査(一括審査)を行うことを求めている。しかし、実際は共同研究機関毎に個別の倫理審査委員会で審査を受けていることも多い。研究機関毎に個別審査を実施している様々な理由があると推測されるが、今まで一括審査実施の可否や実施できない理由を調査した報告はない。そこで我々は、静岡県において治験や臨床研究を積極的に実施している医療機関を対象に、一括審査実施の可否や、実施できない理由を明らかにすることを目的にアンケート調査を行った。

【方法】

 静岡県治験ネットワークに参加している27施設を対象にアンケートを実施した。アンケートでは、一括審査実施の現状、一括審査を行っている施設には実施に至った理由、一括審査を行っていない施設には実施できない理由等を調査した。

【結果・考察】

 アンケート回答率は81.5%(22/27施設)であった。回答を得たうちの1施設は学会発表について同意が得られなかったので本発表の分析から除外した。21施設中一括審査を実施可能な機関は28.6%(6施設)であった。

 一括審査実施可能機関に対して、なぜ一括審査を実施するに至ったのか尋ねたところ"倫理指針の改定により原則として一括審査を実施することとなったから"や"企業等からの要望があったため"といった意見が見られた。

 一括審査を実施していない機関では、一括審査を実施できない理由として"仕組みや手順の作成ができない"が最も多く、次いで"委員会事務局のリソース不足"があげられた。

 今後一括審査を行うためにはどのような課題を解決するべきか、一括審査を実施していない機関に尋ねたところ、手順書の作成や仕組みづくりといった事務的な手続きに関する問題と、人的リソース不足や委員会の負担に対する懸念といった実務的な問題の2つの課題が存在することが明らかとなった。これら2つの課題については、多くの施設が一括審査を行っている施設の手順書及び支援体制に関する情報の共有を望んでおり、情報共有が一括審査実施に向けて重要な要素であることが示唆された。

【結論】

 静岡県治験ネットワークに参加している医療機関における、一括審査の実施状況は約3割といまだ低い状況であった。また、一括審査が実施できない理由と今後の課題を明らかにすることができた。

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