医療の質・安全学会誌
Online ISSN : 1882-3254
Print ISSN : 1881-3658
ISSN-L : 1881-3658
原著
調剤・鑑査をサポートするITシステムの導入は調剤過誤を減少させ患者安全の向上に寄与する
吉田 光一山本 譲飯田 慎也中馬 真幸田﨑 嘉一
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 19 巻 3 号 p. 290-295

詳細
抄録
目的:調剤過誤は重大なインシデントに繋がるため,その対策は医療安全において重要である.旭川医科大学病院薬剤部において,これまで調剤過誤対策を講じてきたが,調剤過誤を完全に防ぐことは困難であった.そこで,調剤過誤対策として情報技術(IT)を活用した支援システムを導入し,調剤過誤の減少と患者安全に寄与しているかどうかについて評価した.
方法:薬剤の取り揃えを支援するシステム(F-WAVE®,TOSHO;以下,調剤支援システム)と薬剤の種類および薬剤の数量の鑑査を支援するシステム(C-correct II®,TOSHO;以下,鑑査支援システム)を導入した.導入前後の各12カ月間(2021年3月〜2023年2月)を対象期間として,インシデントレポート及びヒヤリ・ハット事例の件数を調査した.また,患者影響度が高い調剤過誤について,IT導入前(2018年1月〜2022年2月)のインシデントレポートを調査した.
結果:月平均インシデント件数はIT導入前と比較して有意に減少した.「薬剤名称」及び「規格・剤形」のヒ ヤリ・ハット件数はいずれも有意に減少した.一方で,「計数」のヒヤリ・ハット件数は導入前より有意に増加した.IT導入以前には患者影響度の高い調剤過誤が発生していたが,IT導入後は発生していない.
考察:ITを活用した調剤・鑑査支援システムの導入は,「薬剤名称」,「規格・剤形」,「計数」の調剤過誤対策として有用であり,重大なインシデント防止に効果的であった.
著者関連情報
前の記事 次の記事
feedback
Top