社会学評論
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特集:グローバリゼーション再考
地域戦略に動員される文化的資源
文化的グローバリゼーションの陰画としての自治体文化政策
友岡 邦之
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2009 年 60 巻 3 号 p. 379-395

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抄録

文化におけるグローバリゼーションの進展の中で,日本の地方における文化的活動と鑑賞の機会はむしろ取り残された状況にある.社会学の研究動向としても,そうした地域にあって芸術的あるいは文化的とみなされる表現を,身体感覚を伴って経験できる機会を提供するための制度のあり方は十分に検討されてこなかった.このような文化政策論的な問題は,民衆文化や民族文化をめぐる文化政治学的な現象に焦点が当てられがちな文化社会学の枠組みでは重視されてこなかったのである.その一方で,地域づくりの現場では文化的資源を活用した都市計画が注目を浴びている.一部の都市はグローバルなレベルで文化的資源を調達し,創造的階級と呼ばれる人材を引き付け,それをさらなる都市発展に結びつけようとしている.こうした取り組みに成功する都市とそれ以外の地域との文化的環境の格差は,拡大する傾向にある.このような状況を踏まえるなら,いったいグローバリゼーションの時代における文化的多様性とは何なのか.本稿では,これを地域社会の多様性・固有性という問題に焦点を当てて論じる.

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© 2009 日本社会学会
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