社会学評論
Online ISSN : 1884-2755
Print ISSN : 0021-5414
ISSN-L : 0021-5414
特集・複合社会調査データ分析の新展開
親との関係良好性はどのように決まるか
NFRJ個票データへのマルチレベル分析の適用
筒井 淳也
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 62 巻 3 号 p. 301-318

詳細
抄録

計量社会学でも用いられることが多くなっているマルチレベル分析には, 何らかのデータのまとまり (同一個人に属する複数のデータ, 同一の国に属する複数の個人など) の情報を利用して, 通常の回帰モデルに比べてバイアスの小さい点推定を可能にし, また文脈効果の推定において適切な区間推定を可能にするというメリットがある. この特性を活かすには, 典型的には階層化されたデータ (パネルデータや国際比較可能なクロスセクション・データ) を用いるのが一般的であるが, 本稿では通常のクロスセクション・データにもマルチレベル分析が柔軟に適用可能であることを示すために, 家族関係についての豊富なデータをもつNFRJ (全国家族調査) を使った分析例を示す. 具体的には親との関係良好度の分析を行うが, (最大) 4人の親との関係良好度のデータは個人ごとのまとまりをもっている可能性があり, マルチレベル分析に適している. 分析の結果, 親との居住距離については同居・遠居よりも近居で, 金銭的援助関係については「中庸」である場合に関係良好度が高いということがわかった. これにより, 家族依存の福祉体制であるとされる日本で, 過度の援助関係が感情的なコンフリクトを高めていることが示唆される. 手法の面では, 入手が容易であるクロスセクション・データにもマルチレベル分析が適用可能であることを示すことで, データのより有効な活用を促すことができると思われる.

著者関連情報
© 2011 日本社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top