社会学評論
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特集号・社会学は政策形成にいかに貢献しうるか
少子化対策における家族社会学の貢献と今後の課題
松田 茂樹
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キーワード: 少子化, 家族, 政策
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2015 年 66 巻 2 号 p. 260-277

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抄録

1990年代以降, わが国の少子化対策は行われてきた. その初期から家族社会学の各種研究は少子化の実態や背景要因を理解するためにさまざまな視点を提供し, 保育とワーク・ライフ・バランスを両輪とする少子化対策の政策形成に寄与してきた. その具体的内容を「少子化対策の方向性」「女性就労とワーク・ライフ・バランス」「育児期の孤立と育児不安」「未婚化の要因」の4点を取り上げて論じる. 対策が開始されて20年が経ったが, いまだ出生率は回復しない. この理由は, 従来の対策のメインターゲットと家族の実態の間にミスマッチがあったからである. これまで保育と両立支援により主に出産・育児期に継続就業する正規雇用者同士の共働き夫婦を支援してきたが, そうした層は全体の一部である. 少子化の主因は, 若年層の雇用の劣化により結婚できない者が増えたことおよびマスを占める典型的家族において出産・育児が難しくなっていることであった. 出生率を回復させるには, 政策ターゲットをこれらの層に広げる必要がある. 家族社会学および社会学が, 今後も少子化対策およびそれ以外も含めた政策形成に貢献するためには, (1)問題の実態把握から, 背景要因の解明, 具体的な政策提案までを一気通貫した研究, (2)具体的かつ量的な研究, (3)家族や若者の<全体像>を把握する研究, (4)政策の仮説の設定とそれを検証するフィードバックループを回すこと, が求められる.

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© 2015 日本社会学会
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