社会学評論
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社会病理学における社会構成体からのアブローチの可能性
アノミー概念の検討
米川 茂信
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1978 年 28 巻 3 号 p. 47-61

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抄録

社会病理学における社会構成体からのアプローチは、アノミー概念の検討をとおして可能になる。アノミーは、欲望と手段との矛盾を基本的枠組として内在している。アノミーが歴史的・社会的事象として捉えられるかぎり、欲望と手段との矛盾は、貨弊獲得欲望や地位獲得欲望と階級的地位もしくは社会的地位との問に存する構造的矛盾として把握される。
アノミーとは、このような矛盾を内包した社会的規範の矛盾の問題である。このばあい、欲望に関する規範と手段に関する規範との矛盾および社会的諸規範に内在する階級的契機と超階級的契機との矛盾とが認識される。アノミーは、欲望に関する規範に普遍的に貫徹する超階級的契機 (階級的契機の潜在性) と手段に関する規範において具現する階級的契機 (超階級的契機の形式性ないし抽象性) との矛盾として位置づけられる。
このように把握されるアノミーは、欲望と手段との矛盾あるいはこれらに関わる規範的矛盾が、商品の全社会的支配つまり商品物神 (貨幣物神) と労働力の商品化 (階級的搾取-被搾取関係) とに規定されているがゆえに、資本主義的社会構成体の構造的病理性を反映し、疎外態としての社会構成体の上部構造の機能障害 (行為規範としての意味の喪失) として現象する。他方、アノミーは、社会状況において、アノミー状況としてその病理性を現実化する。ここに、疎外態としての社会構成体と個々の社会病理現象とを媒介するアノミーの位置が明らかになる。

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