社会学評論
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日本の数理社会学の若干の動向
西田 春彦
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1978 年 28 巻 4 号 p. 11-29

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抄録

日本の数理社会学は、戦後の社会調査の計量的な面の発展に由来している。態度測定法を含む尺度構成法を充実することによって、社会学的現象を測定し、対象の特色を明らかにしようと試みてきた。一次元尺度は一本の軸上で対象を矛盾なく位置づける場合をいうが、一次元尺度では適切に測り切れないことが多い。そこで多次元尺度をつくり、出来るだけ最小の次元をもった多次元空間内に対象を矛盾なく配置して、対象の特色を明らかにしようとする動きが出てきた。データが非計量的な場合にも多次元尺度を適用するようになった。その中で、反応と反応をする人を同時に扱い、個人差を計算しようという一連の考え方がある。これは都市の個性、時点の個性などにも拡張することが出来る。
日本の数理社会学のもう一つの関心をもたれている領域は社会移動の研究である。すでに、二七年、三〇年に日本社会学会によるSSM調査がある。現在では世代内移動よりも世代間移動に、状態の記述評価よりも説明の方に関心が向けられるようになった。社会移動量の測定だけでなく、分散分析やパス分析によって移動の説明変数の効き方を求めるようになったが、まだ多くの問題を含んでいる。日本の数理社会学の研究者は少数で動向をいうには不十分であるが、昭和四〇年代から統計的手法のほかに数学的モデルを社会学に導入しようとする動きが見られるようになった。

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