社会学評論
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交換理論の形態と論理
有賀喜左衛門とレヴィ=ストロースの交換理論を比較して
佐藤 康行
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1984 年 34 巻 4 号 p. 437-451

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抄録

従来の構造主義研究は、レヴィ=ストロースをはじめとする西欧の構造主義を紹介、解説するなかで、構造主義の認識論をめぐる議論に集中したきらいがあった。他面では、構造主義に関わる実証的検討も等閑に付されてきたといわなければならない。その意味において、かかる実証研究のなかで構造主義の新たな研究対象と方法を発掘すること、および、先達の成果のなかに構造主義の展開につながる新しい要因を確認することの二つの作業が重要である。
そこで、本稿においては、こうした作業のうち後者の問題を取り上げ、レヴィ=ストロースの交換理論を踏まえて有賀喜左衛門の交換理論を把握することを試みた。その結果として、次のことが明らかにされたといえるだろう。
(1) 有賀の「全体的給付論」は、人々の主体的な営為をいわゆる「現象レベル」において、人々の意識を通して把握しようとしている。
(2) 有賀が提示した「小農的ユイ」は、「互酬性」の交換形態であると考えられる。
(3) 有賀が提示した「本家末家的ユイ」は、カール・ポランニーのいう「再分配 (redistribution) 」の交換形態の一つであると考えられる。
有賀の交換理論は、従来「全体的給付論」としてのみとらえられ、交換の形態と論理については本格的に問題にされることが少なかった。その点において、本稿は有賀の交換理論の再解釈をめざしているといえよう。

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