抄録
組織の活動が日常生活の隅々にまで浸透している現在、公害、取引制限、贈収賄といった組織が実行主体だと考えられる犯罪が大きな社会問題になりつつある。従来の犯罪社会学では、こうした組織による犯罪は、「ホワイトカラー犯罪」の概念のもとに取り扱われてきた。しかし、この概念は、その内容および用語の面において、またそれに付随する説明論理の面において、問題が多い。そこで、犯罪の実行主体が組織自体であり、組織の諸特性が犯罪を生み出すと考えられることから、組織による犯罪をさすものとして、薪たに「組織体犯罪 (organizational crime) 」の概念を提起する。
この組織体犯罪の考察を進めていくには、組織論の知見を取り入れることが不可欠だが、断片的な導入では体系的な分析は望みがたい。そこで、本稿では、組織の重層システムモデルによる組織の戦略変動の分析枠組に依拠して、既存の組織体犯罪研究の成果をも参照しつつ、組織をして犯罪にいたらしめる要因の理論的かつ体系的な考察を試みる。そして、組織の巨大化が進行した現代社会においては、組織体犯罪の生起する可能性が増大していることを論証する。