社会学評論
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都市における自発的市民活動
越智 昇
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1986 年 37 巻 3 号 p. 272-292

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抄録

都市自体の社会的矛盾を自発的に解決しその過程で生活文化を創造していくような一貫性のある社会運動をネットワーキングととらえた。そのことは、運動の行為原理、組織原理、ならびに運動文化に着眼した相互連関的点検により、明確になるであろう。小論ではその着眼点を一二の基準として仮説化し、現代日本の都市化社会において地域住民の間に教育力の創造を志向する市民活動の事例から、ネットワーキングの特質を検討した。その結果、日本では自治体行政と町内会に代表される地域組織との双方に対する緊張関係が問題になる。故に、日常的な生活活動としてのボランタリーな第一次的ネットワークの創造が運動の重要な課題になる。その活力が行政・地域組織にも影響力を示すと共に新しい生活様式の形成に貢献するからである。と共に、行政現場の職員の意識変革を必然化するネットワーキング課題がある。この両課題のゆえに、普遍的価値をめざす住民自治が日本のネットワーキングでは特に注目されねばならぬ。このようなネットワーキングの深化が、都市社会の矛盾をあらわに示す。他方、その解決の深刻化がかえってネットワーキングを質的に高める。もちろん、ネットワーキング自体の矛盾と葛藤がある。行為・組織・運動文化をめぐり、日本の都市社会におけるネットワーキングの動態的な法則を明らかにすることが今後に期待されねばならない。

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