社会学評論
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社会的区分の生成と他者像
荻野 昌弘
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1993 年 44 巻 3 号 p. 298-313

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抄録

本稿の目的は、近代という認識枠組みを自明の前提とするのではなく、新たな特質を兼ね備えた社会が誕生しつつあるという認識を表現し、動態的な分析を方向付けるためのものであるという視点に立って、いかなる点に近代社会の特質があるのかを考察することにある。そのための概念として「他者」と「他者像」という比較社会学理論を可能にする概念が構成される。他者とは、社会の内にも外にも属しているような両義的な存在のことであり、社会を常に生成状態におく動因として定義される。他者の認知は社会が行うが、他者の選択にある程度の幅がある限り、社会は不安定な状態にある。そこで、明確な他者像を構成することによって社会的区分を生成し、社会秩序を安定化させることになる。この他者像の違いに、異なった社会の特質をみることができるというのが本稿で展開される理論であり、この理論に基づいて近代社会の特質を主にカースト制との比較で分析する。その結果として得られたカースト制の特質は、両義的な他者を否定し、互いに自己の所属しないカーストを絶対的な差異として区別し、否定的な他者像とみなすカースト間の「沈黙の相互関係」の制度化にある。これに対して、近代国家の特質は、両義性を兼ね備えた、市場を支える理想的な行為者としての「個人」が他者像となるとともに、支配の及ばない社会の外部にも「未開人」や「外国人」のような他者像を求め、それが秩序形成において欠かすことができない役割を果たしている点にある。

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