社会学評論
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脱工業社会とエスニシティ
「遠隔地ナショナリスト」と新人種差別
関根 政美
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1994 年 44 巻 4 号 p. 400-415

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抄録

脱工業社会 (脱産業社会) は、民族やエスニシティへの関心や民族・エスニック運動への支持と反人種差別意識を高めると同時に、国際化社会 (トランスナショナル社会) となり、国民国家を今まで以上に多民族・多文化社会化する。そのため、様々な人種・民族・エスニック集団が接触する複雑な社会となる。さらに、脱工業社会は高度情報社会でもある。高度情報化は、文化の均質化を進めるばかりではなく、伝統文化と言語や民族・エスニック現象を持続させるメカニズムをもつ。とくに移住先でも伝統文化や言語を維持し、母国の民族・エスニック問題に強い関心を示す遠隔地ナショナリストを大量に生みだす。しかし他方で、多文化社会への動きは、反動的なナショナリズムや巧妙で陰湿化する新人種差別を生むため、現代世界の人種・民族・エスニック問題は持続するであろう。本稿では、高度情報社会のなかの人種・民族・エスニック問題に焦点をあてたい。

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