1999 年 50 巻 1 号 p. 59-74
日系アメリカ女性は, 少なくともジェンダーとエスニシティの二重の周辺性を持つ複合的マイノリティである。これまで彼女たちに対して, ジェンダーあるいはエスニシティだけに焦点をあてた単一因果関係的 (monocausal) モデルかあるいは「追加」モデル (additive model) で分析がなされてきた。しかし1980年代以降, フェミニスト研究の中で明らかにされたのが, 女性の経験をジェンダーで普遍化することで抑圧される多様な女性間の差異と, 本質的アイデンティティの問題である。本稿では, こうした問題を踏まえ, 日系クリスチャン女性の二世, 三世, 四世 の語りを通して, ジェンダー, エスニシティ, 宗教といった複数の社会的カテゴリーが交錯する場でいかにそれらを調停しようとしているか彼女たちの自己再定義プロセスを考察する。