抄録
本稿は, 現代社会における重要な趨勢的傾向の一つであるグローバリゼーション (globalization) を「国民社会」における社会関係の「特殊性」あるいは「固有性」の解体傾向と, その帰結としての社会関係における世界的な「普遍性」あるいは「一般性」の発現傾向として把握し, (広義の) 労使関係を対象としてこの妥当性を検討する.まず, グローバリゼーションの意味と評価に関する議論を検討する作業を通じて, 日本においてもこの過程が進展していることを確認する.次いで, 世界システム論を一つの典拠として, とりわけ日本におけるグローバリゼーションの理論的解釈を試み, (広義の) 労使関係におけるフレクシビリティ (flexibility) の追求としてとらえられる「普遍性」の発現状況を把握する.最後に, こうした「普遍性」の発現が各「国民社会」における労使関係をその「固有性」を媒介としながらも変容させる傾向をもち, 一つの解釈としては労使関係における収斂が進展していることを確認する.