2004 年 54 巻 4 号 p. 322-340
本稿では20世紀の第4四半期に顕著となった個人化の現象を福祉国家との関連で観察し, これが福祉国家に対してどのような問題を突きつけているか, 福祉国家はどのような対応をしなければならないかについて考察する.
個人化は家族, 職域, 地域において観察することができる.そこでは従来の最小単位が分割され, 個人はそれまで所属していた集団から離脱していく.その結果, 個人は集団からの自立を獲得するが, 他方で集団による保護を失い, 社会的に排除される可能性もある.個人化によって新しく生まれた個人は個人主義的な消費スタイルを身につけている.
個人化は既存の福祉国家に対して新しい問題を突きつける.家族の個人化は社会政策の脱ジェンダー化を, 職域の個人化は労働の柔軟化を, 地域の個人化は市民社会化を, 生活スタイルの個人化は消費の柔軟化を要求する.21世紀型の福祉国家が生き延びるためには, これらの新たな課題に応えていかなければならない.