社会学評論
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階層帰属意識に対する地域特性の効果
準拠集団か認識空間か
小林 大祐
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キーワード: 階層帰属意識, 地域, 2次分析
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2004 年 55 巻 3 号 p. 348-366

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抄録

階層帰属意識に関する議論において, これまでその規定要因はマクロ・レヴェルで均一と概ね想定されてきた.しかし, 自身の「何を」, 「誰と」比較するかは必ずしも均一とは限らない.これら双方の意味において, 地域という枠組みは興味深い対象である.そこで, 本稿では地域特性が人びとの階層認知に対してどのような影響を持つのかを検証するために, 市区町村別データと1995年のSSM調査のデータを組み合わせたものを用い, 仮説I「居住する地域の所得レヴェルと自身の所得とを比較している」, 仮説II「地域の諸特性が階層帰属意識の規定構造にも差異をもたらす」について計量分析を行った.
その結果, 仮説Iに基づき地域を準拠集団とみなし, サンプルを地域の所得水準で分割した分析においては, 処理前に比べ所得の効果やモデルの説明力を極端に落とすグループがあるため, すべてのグループで所得の効果と説明力の上昇を想定する仮説Iは却下された.次に仮説IIに基づき, 地域の人口集中度でサンプルを分割し分析を行った結果, 「低」人口集中地域においては「世帯収入」の効果が低いことが示された.説明変数を追加した分析においてもこの傾向は変わらず, さらに「中」人口集中地域で「15歳時財産得点」, 「資産」が有意となった.これらの結果は都市的な空間であるかどうかという地域特性によって, 階層帰属意識の規定要因, そして意味内容が異なっていることを示すものである.

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