2005 年 56 巻 3 号 p. 650-663
1990年代に進行した, 読みやすさやわかりやすさを主眼においたテキストの激増を「テキスト革命」と表現した場合, この革命がどのような論理と力学によって生まれていったのかに関する経験的研究は不足している.社会学教育委員会は, 有斐閣で長くテキスト編集に携わってこられた方々を対象に聞き取りを行い, テキスト編集の歴史を振り返りながら, 「テキスト革命」が生まれたプロセスを明らかにしようとした.
聞き取りの結果, (1) 「テキスト革命」は編集者の側のイニシアチブによって引き起こされたこと, (2) それ以前は概念教授型がメインであり, 1970年代から徐々にパースペクティヴ教授型へとシフトしつつあったこと, (3) 学生のテキスト購入意欲減退などの変化に対応するために「テキスト革命」が起こったこと, (4) 今後も教育現場や市場の要請に応える形でテキスト制作が進まざるを得ないこと, などが明らかになった.