社会学評論
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医療化論と生物医療化論
額賀 淑郎
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2006 年 56 巻 4 号 p. 815-829

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抄録

近年, 生物医学や先端医療の問題に対して, 科学社会学のアプローチを医療社会学に導入した「医科学の社会学」が起こりつつある.本稿の目的は, 医療社会学と「医科学の社会学」の交錯を理解するため, 医療化論から生物医療化論へ展開してきた過程を分析することにある.1970年代の医療化概念は, 1) 日常生活の問題から医学の問題への再定義, 2) 医療専門職の統制強化, を特徴とする.医療化論は「生物学的事実としての疾病」と「逸脱としての病い」という分類を前提とし, 前者を所与と見なし後者の分析のみを行ってきた.その結果, 1980年代には, 社会構築主義者は, 生物医学の社会的側面のみを分析し, 明確な定義がないまま「生物医療化」の術語を導入した.1990年代には, ゲノム研究などの進展により, 「遺伝子化」概念が生物医療化の1つとして提唱されたが, 遺伝医療の内容の分析は行われなかった.しかし, 2000年代になると, 科学社会学者は, 生物医療化をイノベーションによる生物医学の歴史的変動として定義づけた.そのため, 近年の生物医療化論は, 1) 科学的知識と社会的知識を共に含む包括的な研究, 2) 実証的な事例研究, 3) 内在的な立場からの内容の分析, という新たな展望を開く.

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