社会学評論
Online ISSN : 1884-2755
Print ISSN : 0021-5414
ISSN-L : 0021-5414
パートの基幹労働力化と正社員の労働
「均等処遇」のジレンマ
西野 史子
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 56 巻 4 号 p. 847-863

詳細
抄録

パートの「基幹労働力化」の議論において, これまでの分析対象は職務の内容を中心としていた.しかし職務の重なりがかなりの程度進行した現在, 次なる段階として職務以外の部分, すなわち責任の範囲や職務経験の幅, 拘束性における基幹パートと正社員との接近を明らかにする必要がある.
本稿では, 月間労働時間が120時間以上の「基幹パート」と正社員とでは何が異なるかについて, 筆者が行ったインタビューとアンケートから検証した.その結果, (1) 職務内容の面では基幹労働力化は進行しているものの, (2) 責任の点では, 同じレベルの社員とパートでも売上げ責任やプレッシャーの強さなどが異なる.また (3) 職務経験の幅でも限界があり, (4) 拘束性についても契約労働時間の違い以上に, 残業や早出など正社員の側の拘束性が高い.つまり, 基幹労働力化は職務内容の重複を超えて進行しているものの, 未だ限定的であることが示された.
またインタビューによれば, 今後, 正社員は少数精鋭化される方向にあり, 正社員とパートとの間の「再分離」が進行する可能性がある.そのため均等処遇政策の推進において, 職務の同一性を基準とする現在のアプローチは有効性を失う恐れがあり, 正社員と非正社員の賃金体系の統合再編による職務給の推進のような全く別のアプローチが必要となる.

著者関連情報
© 日本社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top