社会学評論
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社会運動と公共政策
政策形成における社会運動のインパクトと「協働」政策の課題
牛山 久仁彦
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キーワード: 公共政策, 協働, NPO
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2006 年 57 巻 2 号 p. 259-274

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抄録

社会運動は, 社会をどのような方向に動かすのかを賭けて, さまざまな集団が行う集合行為である.社会運動にはさまざまな主体や課題が存在し, それぞれが自らの運動に「公共性」があることを主張して政府や他の集団と競い合う.政府が従来独占してきた「公共性」は, 「新しい社会運動」の登場に象徴的なように, 大きく揺らいでおり, それが財政危機や過度の規制による「政府の失敗」によって加速している.「市民的公共性」の概念提示に代表されるように, もはや「公共性」は政府と社会運動のどちらのものかを競い合うものとなっているのである.一方, 「公共性」を実現するために政府が実施する施策として考えられてきた公共政策も, 同様の課題に直面している.公共政策の担い手が多様化し, NPOなどの市民活動が, 政府と共に公共政策のあり方を検討する役割を期待されている.近年, 日本の行政, とくに自治体行政において課題となっている「協働」は, その意味で重要性を高めているが, 一方でそれらが体制内化され, 行政の都合で行われているという批判も少なくない.そこで, あらためてそれらの活動を「新しい社会運動」論の視点から再構築することが求められる.「協働」を社会学の議論の中で用いられてきた「対抗的分業」の視点から問い直し, 政府と民衆が厳しい緊張関係の中で「歴史を作り出す行為」として「協働」を再構築する必要があることを本稿は論じたものである.

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