社会学評論
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国際移民と市民権の社会理論
ナショナルな枠と国際環境の視角から
樽本 英樹
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キーワード: 国際移民, 市民権, 国際環境
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2007 年 57 巻 4 号 p. 708-726

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抄録

国際社会学は, グローバル化した現実の分析をその存立根拠としつつも, その社会理論化には必ずしも成功してこなかった.しかしどのような社会理論化の可能性があるのだろうか.どのようにしたら国際社会学的想像力を発揮できるのか.国際移民と市民権の関係性というトピックを政策との関連で取り上げ, 3つの観点から, 国際社会学の社会理論化の可能性を検討していく.第1に, トピックの検討.理論化する価値のあるトピックを選ばなくてはならないし, 単一のトピックに関して複数の説明的理論ができる可能性を自覚しなくてはならない.第2に, ナショナルな枠の徹底化.グローバル化における国際移民と市民権の関係性の変容を理論化するといっても, ハマー=小井土=樽本モデル (HKTモデル) のようなナショナルな枠に基づく理論の構築および充実から始めなくてはならない.第3に, ナショナルな枠の超越.国際移民と市民権の関係性の理論化に関しては, 国際レジームや国際人権規範が位置する国際環境をいかに理論に取り込むかが, ナショナルな枠を超越するための鍵となる.以上のことから, グローバル化の分析が国際社会学の使命だとは言っても, ナショナルな枠を敵視することなく, かつトランスナショナルな枠を神格化することなく, 説明力を上げるという観点から理論構築を行うべきである.

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