JAPANESE JOURNAL OF RESEARCH ON EMOTIONS
Online ISSN : 1882-8949
Print ISSN : 1882-8817
ISSN-L : 1882-8817
Reliability and validity of the Japanese version of the Craving Experience Questionnaire for alcohol
Makoto Nishimura Kazuya Inoue
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML Advance online publication
Supplementary material

Article ID: 24-017

Details
Abstract

The Craving Experience Questionnaire (CEQ) is a scale that assesses the cognitive aspects of craving, specifically in terms of frequency and intensity. We examined the reliability and validity of the Japanese version of the CEQ for alcohol craving. A total of 300 adults who consume alcohol at least once a month participated in the web-based study. The factor analysis of the frequency and intensity scales revealed a three-factor structure, which was consistent with those of the original scale. The subscales of the frequency scale showed moderate to high correlations with the scales pertaining to problematic alcohol consumption (i.e., OCDS and AUDIT). The higher scores observed in the craving-induction group relative to the no-induction group provide evidence to support the construct validity of the intensity scale. Following a three-week period, each subscale of the frequency scale demonstrated high intraclass correlation coefficients, except for the frequency subscale. These findings suggest that the Japanese version of the CEQ has satisfactory reliability and validity, although the problem of test-retest reliability remains.

問題と目的

飲酒渇望(alcohol craving)とは,アルコール飲料を摂取したいという強い欲求または衝動の感覚である(American Psychiatric Association, 2013)。渇望はアルコール使用障害の主要な診断基準や特徴のひとつであり(American Psychiatric Association, 2013; World Health Organization, 2020),アルコール使用の再発と関連する。実際,治療開始時の飲酒渇望の頻度は,再発時における飲酒日数,平均飲酒量の多さ,大量飲酒日数,大量飲酒への再発,治療からのドロップアウトを予測する(Martins et al., 2022; Tatsuzawa et al., 2002)。また,対処スキルの獲得や自己効力感の増加と並んで,渇望の減少はアルコール使用障害を含む物質使用障害の行動変容を促進することが示唆されている(Magill et al., 2023)。このように,渇望はアルコール使用障害の診断や治療に深く関わっているので,治療初期のアセスメントや行動変容の効果を測定するために,渇望を評価することは重要である。

渇望を評価する尺度は,2つの主要な時間枠で分類することが提案されている(Drobes & Thomas, 1999)。一つは,1週間または1か月といった特定の期間における,渇望経験に焦点を当てた特性尺度である。特性尺度はアルコール使用障害の予後を予測するため,臨床的なアセスメントとして役に立つと考えられる。もう一つは,回答者の「今,ここ」に焦点を当てた状態尺度である。状態尺度は治療セッションにおける継時的な渇望の変化を把握するために利用できる。また,状態尺度による即時評価は,渇望に関連する認知的,行動的及び感情的メカニズムを理解するのに役立つため,実験環境では特に有用である。したがって,渇望尺度は特定の期間における渇望の頻度を測定できる特性尺度と,現在の渇望の強さを測定できる状態尺度の両面を備えていることが重要である。しかしながら,代表的な飲酒渇望尺度は特性面(例えば,Obsessive Compulsive Drinking Scale: OCDS, Anton et al., 1995)あるいは状態面(例えば,Alcohol Urge Questionnaire, Bohn et al., 1995; Alcohol Craving Questionnaire, Singleton et al., 1994)のどちらか一方しか測定できない。特性渇望と状態渇望の両側面を測定できる飲酒渇望尺度には,Alcohol Craving Experience Questionnaire(ACE; Statham et al., 2011)がある。ACEは後に,さまざまな時間枠や嗜癖対象に適用できるCraving Experience Questionnaire(CEQ; May et al., 2014)として拡張された。

CEQは欲求の精緻化侵入理論(elaborated intrusion theory; Kavanagh et al., 2005)に基づいて,渇望の認知的側面を特性と状態の両面から測定できる尺度である。精緻化侵入理論では,渇望が2段階のプロセスから生じると仮定する。第1段階では環境や心身からの手がかり(例えば,アルコール飲料の広告,不安など)によって渇望対象に関連する侵入思考が引き起こされる。第2段階で,渇望に関連する侵入思考が感覚イメージによって精緻化されることによって渇望体験が生起すると仮定している。精緻化侵入理論に従って,CEQは渇望頻度/強度,感覚イメージ,渇望に関連する思考の侵入性という3つの次元で構成される。また,特定の期間の渇望頻度を評価する特性尺度(CEQ-Frequency; CEQ-F)と現在の渇望の強さを評価する状態尺度(CEQ-Strength; CEQ-S)からなる。

CEQの信頼性及び妥当性は飲酒渇望のみならず,さまざまな渇望対象で確認されている。CEQの3因子構造はアルコール,タバコ,ギャンブル,食物を対象にした研究でそれぞれ確認されている(Cornil et al., 2019; Kılıç et al., 2021; 西村他,2025; Statham et al., 2011)。CEQの併存的妥当性はアルコール,タバコ,ギャンブル,食物全般を対象にした研究で報告されている(Cornil et al., 2019; Kılıç et al., 2021; May et al., 2014; 西村他,2025; Statham et al., 2011)。一方で,CEQによる飲酒渇望の測定の問題に,CEQ-Sの構成概念妥当性の検証が適切に行われていないことが挙げられる。CEQ-Sは状態尺度であるにも関わらず,これまでOCDSや問題飲酒の重症度を測定するAlcohol use disorders identification test(AUDIT; Saunders et al., 1993)といった特性尺度との収束的妥当性しか報告されていない(Statham et al., 2011)。

CEQ下位尺度における高い内的整合性はアルコール,たばこ,ギャンブル,チョコレート,食物全般を対象にした研究で得られており,十分な再検査信頼性がタバコと食物全般を対象にした研究で確認されている(Andrade et al., 2012; Cornil et al., 2019; Kılıç et al., 2021; 西村他,2025; Statham et al., 2011; Wilson et al., 2021)。

目的

CEQは精緻化侵入理論の概念モデルに従って,物質使用や嗜癖行動に影響する渇望を特性面と状態面で評価でき,臨床における飲酒渇望のアセスメントや心理社会的治療の効果測定にも活用できると考えられる。特に,精緻化侵入理論に基づいた介入,すなわち心的イメージを用いて感覚イメージによる精緻化を中断させる介入の評価に適した尺度であると言える(Wilson et al., 2021)。また,物質や嗜癖行動などに共通する渇望の認知面のメカニズムを理解するために必要な尺度である。

そこで本研究では,飲酒渇望に対する日本語版CEQの信頼性と妥当性を検討することを目的とする。具体的にはConsensus-based Standards for the selection of health Measurement Instruments(COSMIN)Risk of Bias checklist(Mokkink et al., 2010; 佐藤・土屋,2022)に従って,CEQ-F及びCEQ-Sの構造的妥当性,構成概念妥当性,内的整合性,CEQ-Fの再検査信頼性を検討する。また,尺度の信頼性と妥当性は良い測定特性の基準を用いて評価する(Prinsen et al., 2018; 佐藤・土屋,2022)。

構成概念妥当性の仮説

仮説1

CEQ-Fの収束的妥当性を検討するために,OCDSの強迫観念及び強迫行為との関連を検討する。OCDSの強迫観念は飲酒に関連する侵入思考やイメージの頻度や抵抗困難を測定している。また,OCDSの強迫行為は,飲酒に関連する強迫観念に基づく強迫行為を測定している。一方,CEQ-Fはこれら飲酒に関連する観念を,感覚イメージや侵入思考の体験頻度,及び強い欲求を感じる頻度と別々の要素として測定している。つまり,CEQ-Fの各下位尺度とOCDSの強迫観念や強迫行為は共通する概念を異なる観点から測定していると考えられる。したがって,CEQ-Fの各下位尺度はOCDSの強迫観念(仮説1a)及び強迫行為(仮説1b)と有意な正の相関関係となることが予想される。

OCDSの強迫観念と同様に,CEQ-FはAUDIT合計点とも関連することが予想される。渇望はアルコール使用障害を構成する要素のひとつであるため,CEQ-Fの下位尺度の得点が高くなると,飲酒の量・頻度・問題行動は多くなると考えられる。したがって,CEQ-Fの各下位尺度はAUDITと有意な正の相関関係となることが予想される(仮説1c)。仮説1を採択するための効果量は,Statham et al.(2011)の結果を参考に設定する(Table 1)。

Table 1 Hypotheses regarding the construct validity of the Japanese version of the CEQ-F subscales and corresponding results

仮説2

先行研究からの改善点として,CEQ-Sの構成概念妥当性を検討するために,渇望状態を操作して群間の得点を比較する。CEQ-Sは渇望の状態面を測定する尺度であるため,渇望状態を変化させる操作の影響を受けるはずである。したがって,飲酒渇望を喚起する感覚イメージを誘導する群(渇望イメージ群)は,ボールペンを使用する感覚イメージを誘導する群(中立イメージ群)と比べて,誘導後におけるCEQ-Sの渇望強度,感覚イメージ,侵入性の得点は高くなり,大きい差がみられると予測される。

方法

調査参加者

調査対象者は月に1度以上飲酒する日本で飲酒可能な法定年齢である20歳以上の者とした。COSMINの基準に従い,参加者は項目数の7倍かつ100名以上の基準を満たすことを目標とした。項目数は10であるため,イメージ誘導で2つの群へ半数ずつ割り当てること及び10%のドロップアウトを考慮し,目標人数は300人とした。調査参加者の募集には株式会社クラウドワークスを利用し,300人が参加した。3週間後の再調査には231人が参加した。

調査時期

2023年5月第2週に調査を実施した。再調査は調査の3週間後の6月第1週に実施した。

倫理的配慮

研究は東京都立大学の研究倫理委員会による承認を得て実施した(H5-104)。研究の実施前に,目的や倫理的配慮を説明し,同意を得たうえで実施した。また,飲酒渇望を誘導する手続きがあることから,アルコール使用障害や依存症の治療を受けている人あるいは過去に受けていた人,飲酒のことを考えると気分や体調が悪くなる場合は参加を控えることを明記した。

調査材料

人口統計学的変数

年齢,性別,最も好きで飲む機会が多いアルコール飲料,飲酒を開始する時間について回答を求めた。

日本語版CEQ-F

特定の時点から現在までの飲酒渇望の頻度を測定する尺度である(西村他,2025)。渇望頻度尺度(frequency)3項目,感覚イメージ尺度(imagery)4項目,侵入性尺度(intrusiveness)3項目で構成される(項目の詳細はFigure 1(A)を参照)。「あなたのアルコール飲料への渇望や欲求について質問します。この1週間で,以下のことがどのくらいの頻度で起こったかを答えてください。」と教示し,「0:全くない」から「10:常にある」までの11件法で評定し,得点が高いほど渇望の頻度が多いことを表す。渇望頻度尺度は特定のアルコール飲料への欲求や摂取したい衝動の経験頻度,感覚イメージ尺度は飲酒渇望に関連する感覚イメージの経験頻度,侵入性尺度は飲酒渇望に関連する侵入思考の経験頻度をそれぞれ測定する。

Figure 1 Results of confirmatory factor analysis of the Japanese version of the Craving Experience Questionnaire-Frequency (A) and -Strength after craving induction (B)

Note. The path coefficients in the figure represents the standardized estimates.

日本語版CEQ-S

現在の飲酒渇望の強さを測定する尺度である(西村他,2025)。渇望強度尺度(intensity)3項目,感覚イメージ尺度(imagery)4項目,侵入性尺度(intrusiveness)3項目で構成される(項目の詳細はFigure 1(B)を参照)。「あなたのアルコール飲料への渇望や欲求について質問します。今現在,あなたが欲しくてたまらないアルコール飲料について考えてください。それぞれの質問について,最も当てはまる数字に〇をつけてください。」と教示し,「0:全くない」から「10:非常にある」までの11件法で評定し,得点が高いほど渇望が強いことを表す。渇望強度尺度は特定のアルコール飲料への欲求や摂取したい衝動の強さ,感覚イメージ尺度は飲酒渇望に関連する感覚イメージの鮮明性,侵入性尺度は飲酒渇望に関連する侵入思考の強さをそれぞれ測定する。

日本語版OCDS

飲酒渇望の認知的及び行動的側面を測定する尺度である(Tatsuzawa et al., 2002)。OCDSは飲酒渇望,飲酒に関連する思考や衝動を測定するために開発された尺度である(Anton et al., 1995)。日本語版OCDSは飲酒に対する強迫観念6項目と強迫行為8項目からなり,5件法で評価する。本研究におけるα係数は強迫観念が.71,強迫行為が.81であった。

問題飲酒指標AUDIT

問題飲酒の重症度を評価する尺度である(廣・島,1996)。AUDITは飲酒の量・頻度,飲酒に関連する問題からなる10項目で構成され,3件法または5件法で評価する。得点が高いほど,飲酒パターンが危険または有害であることを表し,0から7点は問題のない飲酒,8から14点は危険な飲酒,15点以上はアルコール依存の疑いと判定される。本研究におけるα係数は.81であった。

Web調査における努力の最小限化を検出するために,instructional manipulation check(IMC)を行った(増田他,2019)。また,CEQ-F及びOCDSに各1項目のdirect question scales(DQS)を含めた。具体的には「この質問では一番右を選択してください」と質問した。

イメージ誘導

CEQ-Sを渇望状態下で評価するために,またイメージ誘導前後及び群間で比較するためにイメージ誘導を行った。音声と文章により,渇望イメージ群では「アルコール飲料」を飲んでいる様子,中立イメージ群では「ボールペン」を使っているイメージを誘導した。誘導手続きは食物の渇望を高めることが確認されているシナリオ(西村他,2025)を参考に作成した。所要時間は全体で約1分30秒間とした。飲酒と関連した手がかりや文脈は,飲酒渇望を高めると報告されている(Drummond, 2001)。アルコール飲料以外の飲み物や食物のイメージは,飲酒と関連した手がかりになってしまう可能性がある。そのため,本研究では,飲酒の手がかりや文脈と無関係であり,日常的に行われる活動で,容易に感覚イメージを想起できることから,中立イメージ群では,ボールペンを使っている様子が採用された。

参加者は,渇望イメージ群ではアルコール飲料を最後に飲んだ体験(中立イメージ群では,ボールペンを最後に使った体験)を思い出すように教示され,思い浮かべたアルコール飲料(ボールペン)をキーボードで入力するように求められた。また,思い浮かべたアルコール飲料を最後に飲んだ時期(ボールペンを最後に使った時期)及びどのくらい美味しかったか(書きやすかったか)を,それぞれ5件法で回答するように求められた。その後,飲酒したとき(ボールペンを使ったとき)の感覚や満足した気持ちをできるだけ鮮明に,可能な限り詳細に思い出して「今まさにアルコール飲料を飲んでいる(ボールペンを使っている)かのように」15秒間思い浮かべるよう音声と画面表示で指示された。

手続き

調査はlab.js(Henninger et al., 2022)で作成し,全てオンラインで行われた。参加者は研究参加に同意した後,人口統計学的変数,日本語版CEQ-Sに回答した。続いて日本語版CEQ-F,日本語版OCDS及びAUDITに回答した。なお,これら3つの尺度の回答順序はランダムであった。また,CEQ-S及びCEQ-Fの質問項目の順番はランダムであった。その後,参加者は渇望イメージ群または中立イメージ群へ無作為に割り当てられた。割り当てられた群でイメージ誘導を受け,参加者は日本語版CEQ-Sのみ再度回答を求められた。さらに,調査が素面で行われていたかを確認するために,調査中の飲酒の有無について回答を求めた。調査の最後に,本研究の目的について詳しい説明を提示し,研究データからの除外を希望するか回答を求めた。調査参加の謝礼として,参加者にはクラウドソーシングサイト経由で300円が支払われた。

3週間後の再調査では,日本語版CEQ-FとAUDITについて回答を求めた。これら2つの尺度の回答順序はランダムであった。再調査の謝礼として,参加者には100円が支払われた。

データ解析

すべての分析は統計解析環境R(version 4.0.3; R Core Team, 2020)を用いて行った。日本語版CEQ-F及び日本語版CEQ-Sが原版と同じ10項目3因子構造となるか検討するため,lavaanパッケージ(Rosseel, 2012)で最尤法を用いた確認的因子分析を行った。状態渇望は一過性かつ文脈依存的であるため(Sayette et al., 2000),日本語版CEQ-Sの妥当性や信頼性の検討には渇望経験下で評価した値を用いることが適当である。そのため,CEQ-Sの確認的因子分析及び内的整合性の検討には,イメージ誘導後の渇望イメージ群のデータを使用した。適合度指標の評価は比較適合度指数(CFI)>.95,または近似二乗平均誤差(RMSEA)<.06あるいは標準化二乗平均残差(SRMR)<.08とした(Prinsen et al., 2018)。内的整合性はMcDonaldのω係数とCronbachのα係数を算出し,評価基準は>.70とした。

構成概念妥当性の仮説検証には,CEQ-Fの収束的妥当性を確認するために,下位尺度との関連が想定される日本語版OCDS及びAUDITとのPearsonの積率相関係数を算出した。評価基準は小さい(r=.10),中程度(r=.30),大きい(r=.50)相関とした(Cohen, 1988)。

CEQ-Sの構成概念妥当性,すなわち,渇望状態によってCEQ-Sの値に差があるか検討するために,イメージ誘導(渇望イメージ群,中立イメージ群)と時期(イメージ誘導前,誘導後)を独立変数,CEQ-Sの下位尺度を従属変数とする二要因分散分析を行った。イメージ誘導後の群間比較に興味があるため,参加者間デザインの効果量の評価基準は小さい(ηg2=.01),中程度(ηg2=.06),大きい(ηg2=.14)とした(Olejnik & Algina, 2003)。

CEQ-Fの再検査信頼性を検討するために,調査と再調査における二要因変量効果モデルの級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficient: ICC[2,1])を算出した。ICCの算出にはpsychパッケージ(Revelle, 2021)を使用した。評価基準は>.70とした(Prinsen et al., 2018)。なお,調査から再調査にかけてのアンカーは「飲酒習慣」とし,AUDIT重症度が変化した参加者は飲酒習慣が変わったとみなして分析から除外した。また,測定の標準誤差(Standard Error of Measurement: SEM),検出可能最小変化(Smallest Detectable Change: SDC)及び一致限界(Limits of Agreement: LoA)を算出し,測定誤差を確認した。

結果

参加者のうち19人が参加後に研究を辞退した。DQSに1項目以上違反した23人,調査プログラムに不具合があった4人を除いた,254人(男性121人,女性127人,その他1人,無回答5人,M=42.17歳,SD=10.02)のデータを分析に使用した。IMCに違反した参加者,飲酒の影響下で回答していた参加者はいなかった。これらの参加者にデータの欠損はなかった。

構造的妥当性

確認的因子分析の結果,日本語版CEQ-Fの適合度指標はCFI=.95, RMSEA=.14(90% CI[.12, .16]), SRMR=.06であった(Figure 1(A))。CEQ-Sの適合度指標はCFI=.98, RMSEA=.09(90% CI[.05, .12]), SRMR=.03であった(Figure 1(B)4。また,日本語版CEQ-F及びCEQ-Sの下位尺度から各項目に対する標準化因子負荷量は.85以上の正の値であり,全て有意であった(p<.001)。

修正指標をもとに誤差共分散を導入したが,RMSEAの値は改善しなかったため(日本語版CEQ-FのRMSEA=.08(90% CI[.06, .10]),日本語版CEQ-SのRMSEA=.07(90% CI[.02, .11])),適合度指標は導入前の結果を示した。

内的整合性

日本語版CEQ-F及びCEQ-Sの下位尺度におけるω係数及びα係数はいずれも.91以上であった(Figure 1)。

日本語版CEQ-Fの構成概念妥当性

日本語版CEQ-Fの下位尺度は日本語版OCDSの強迫観念(渇望頻度:r=.44;感覚イメージ:r=.54;侵入性:r=.48, ps<.001)や強迫行為(渇望頻度:r=.37;感覚イメージ:r=.44;侵入性:r=.38, ps<.001)と有意な正の相関を示した。日本語版CEQ-Fの下位尺度はAUDITと有意な正の相関を示した(渇望頻度:r=.37;感覚イメージ:r=.38;侵入性:r=.34, ps<.001)。全ての相関係数の結果を電子付録のTable S1に示した。

日本語版CEQ-Sの構成概念妥当性

イメージ誘導群と時期における日本語版CEQ-S下位尺度の平均値及び標準偏差をTable 2に示した。イメージ誘導と時期を独立変数,CEQ-Sの下位尺度を従属変数とする二要因分散分析を行った結果,いずれの下位尺度の分析においても,イメージ誘導と時期の交互作用が認められた(Fs(1, 252)>74.55, ps<.001, ηg2s>.23)。各要因の水準ごとに単純主効果検定を行った結果,イメージ誘導前における尺度得点は,渇望強度と侵入性は両群で差がなかったが(Fs(1, 252)<2.83, ps>.094, ηg2s<.01),感覚イメージは渇望イメージ群が中立イメージ群よりも低かった(F(1, 252)=4.94, p=.027, ηg2=.02)。一方,イメージ誘導後における尺度得点は,いずれの下位尺度も渇望イメージ群が中立イメージ群よりも高かった(Fs(1, 252)>48.55, ps<.001, ηg2s>.16)。CEQ-S下位尺度の二要因分散分析及び単純主効果検定の結果をTable S2からTable S7に示した。

Table 2 Means and standard deviations of Japanese version of the CEQ-S subscales in each group

日本語版CEQ-Fの再検査信頼性

再調査でDQSに違反した2人,調査から再調査にかけてAUDIT重症度が変化して「飲酒習慣が変わった」と判断された15人を除いた,214人(男性101人,女性107人,その他1人,無回答5人,M=42.35歳,SD=9.75)のデータを分析に使用した。

調査(Time 1)と再調査(Time 2)における,CEQ-F下位尺度の記述統計量をTable 3に示した。調査と再調査との級内相関係数は,渇望頻度がICC=.50, 95% CI=[.38, .61],感覚イメージがICC=.70, 95% CI=[.62, .76],侵入性がICC=.76, 95% CI=[.69, .81]であった。

Table 3 Mean, standard deviation, and reliability of measurement of Japanese version of the CEQ-F (n=214)

日本語版CEQ-Fの測定誤差は渇望頻度がSEM=4.65, SDC=12.88, LoA(95% CI)=[−14.30, 10.31],感覚イメージがSEM=4.37, SDC=12.11, LoA(95% CI)=[−12.65, 11.53],侵入性がSEM=2.29, SDC=6.36, LoA(95% CI)=[−6.77, 5.87]であった。

考察

本研究の目的は渇望の特性・状態尺度である日本語版CEQの飲酒渇望を対象にした信頼性と妥当性を検討することであった。

日本語版CEQの構造的妥当性及び内的整合性の検討

確認的因子分析の結果,日本語版CEQ-F及びCEQ-Sの適合度指標は評価基準のCFI>.95かつSRMR<.08に該当し,原版と同じ構造を持つ仮説モデルに良好に適合したと判断された。また,日本語版CEQ-F及びCEQ-Sの下位尺度はいずれも高い内的整合性を有していた。よって,飲酒渇望において日本語版CEQ-Fは渇望頻度3項目,感覚イメージ4項目,侵入性3項目,日本語版CEQ-Sは渇望強度3項目,感覚イメージ4項目,侵入性3項目とすることが適当と確認できた。

日本語版CEQ-Fの構成概念妥当性の検討

収束的妥当性の観点から日本語版CEQ-Fの下位尺度の構成概念妥当性を検討した。日本語版CEQ-Fの下位尺度は,飲酒渇望の頻度を測定する日本語版OCDSの強迫観念(仮説1a)及び強迫行為(仮説1b),アルコール依存の重症度を測定するAUDIT(仮説1c)と中程度から大きい相関を示し,収束的妥当性の仮説1は支持された。日本語版CEQ-Fの渇望頻度及び侵入性と日本語版OCDSの強迫観念との相関係数は,予想していたよりも小さかったが,関連の方向は一致していた。よって,これら2つの仮説についても,部分的に支持されたと考えられる。

以上のように,日本語版CEQ-Fの構成概念妥当性の仮説のうち77.78%が支持され(Table 1),良い測定特性の基準(Prinsen et al., 2018; 佐藤・土屋,2022)である75%を上回った。よって,日本語版CEQ-Fは飲酒渇望を測定する上で,十分な構成概念妥当性を備えていることが確認できた。

日本語版CEQ-Sの構成概念妥当性の検討

日本語版CEQ-Sの下位尺度の構成概念妥当性は,飲酒渇望に影響を与えると理論的に想定される状態との関連から検討した。日本語版CEQ-Sの渇望強度,感覚イメージ及び侵入性は,イメージで飲酒渇望に関連する感覚を誘導した群では,渇望とは無関係な中立的な感覚を誘導した群よりも高くなった。また,イメージ誘導後における群間差の効果量は大きかった。よって,日本語版CEQ-Sの下位尺度が渇望状態を反映するとの構成概念妥当性の仮説2は全て支持された。CEQ-Sは原版において特性尺度との収束的妥当性しか検討されていなかった(Statham et al., 2011)。そのため,CEQ-Sの状態尺度としての構成概念妥当性は本研究において初めて確認された。

日本語版CEQ-Fの再検査信頼性の検討

日本語版CEQ-Fの感覚イメージ及び侵入性は十分な級内相関係数が得られた。一方,渇望頻度の級内相関係数は評価基準を下回った。つまり,渇望頻度については,測定時点によって変動しやすい課題があると言える。他の尺度と比べて,渇望頻度の級内相関係数が低かった理由として,AUDITによる重症度が飲酒習慣の変化を十分に捉え切れていなかった可能性が考えられる。

こうした限界はあるものの,SDCの値からは,日本語版CEQ-Fの渇望頻度と感覚イメージは13点,侵入性は7点よりも大きな変化があれば,統計的に意味のある変化と解釈できる。

本研究の結論及び今後の展望

日本語版CEQは,成人の飲酒渇望の特性面と状態面において,渇望頻度/強度,感覚イメージの鮮明性,渇望に関連する思考の侵入性を測定するために必要な,構造的妥当性,内的整合性及び構成概念妥当性を有することが明らかとなった。つまり,日本語版CEQは食物だけでなくアルコールに対する渇望の測定にも活用できる尺度であることが示された。特性尺度である日本語版CEQ-Fは治療方針の計画に,状態尺度である日本語版CEQ-Sは治療効果のモニタリングに活用できると考えられる。

本研究は,アルコール使用障害に相当する参加者が少なかった。そのため,本尺度の信頼性や妥当性を臨床群に一般化することには注意が必要である。今後,尺度の反応性や解釈可能性の観点からはアルコール使用障害を対象にして,さらなる研究を行う必要がある。日本語版CEQ-Fの構成概念妥当性について,本研究では収束的妥当性しか検討していなかった。今後の研究では,渇望と理論的に異なる構成概念との弁別的妥当性を確認する必要がある。また,日本語版CEQ-Fの渇望頻度の再検査信頼性についてはアンカーを変更して再度検証する必要がある。

脚注

1 日本語版OCDSの使用について,みたかの森こころのクリニックの立澤賢孝先生に使用許諾と尺度を提供いただいた。この場を借りて御礼申し上げる。

2 本論文の一部は,日本認知・行動療法学会第49回大会で発表した。

3 本研究は,2023年度公益財団法人たばこ総合研究センターの研究助成(研究代表者:西村誠)によって行われた。

4 日本語版CEQ-Sの構造的妥当性について,渇望イメージ群と統制イメージ群が異なる状態であることを考慮して,各群における潜在変数の同質性を確認するために,多母集団同時分析(multiple group structural equation modeling)を行った。この分析による適合度指標は,渇望イメージ群だけを使用した分析と変わりがなかった(CFI=.96, RMSEA=.11(90% CI[.09, .14]), SRMR=.04)。

利益相反

本論文に関して,開示すべき利益相反関連事項はない。

引用文献
 
© 2026 Japan Society for Research on Emotions
feedback
Top