Article ID: 25-005
This study aimed to examine the test-retest reliability and construct validity of the Self-Esteem Questionnaire in the Teaching Profession (SEQ-TP) and the Self-Efficacy Questionnaire in the Teaching Profession (SEQ-TP). The survey was administered twice to college students who were prospective teachers (Time 1: N=308, Time 2: N=301, Time 1 and 2: N=177). Five scales were used in the survey: SEQ-TP (Esteem), SEQ-TP (Efficacy), the self-efficacy scale, the sense of authenticity scale, and the teacher efficacy scale. The test-retest reliability results were r=.812, p<.001 for the SEQ-TP (Esteem), and r=.745–.811, p<.001 for each factor of the SEQ-TP (Efficacy). For each scale, Pearson’s correlation coefficients were calculated with the target scales to assess construct validity. The results indicated positive correlations, consistent with the hypotheses. In the discussion section, the prospects for future research utilizing these scales are discussed.
近年,学校教員の労働環境が社会問題となっており,その問題の1つとして,教員の自尊感情・自己肯定感(self-esteem)や自己効力感(self-efficacy)の問題が注目されている。
自尊感情は研究者によって定義が異なるが,広く知られているのは,「自己に対する肯定的,また否定的な態度」とするRosenberg(1965)の定義であろう。また,自尊感情には自分を他者よりも優れると捉えるという感覚(very good)と,自分を平均的な人間と捉えながらも満足していく感覚(good enough)があると述べている(Rosenberg, 1965)。Branden(1969)においても,自尊感情は自己信頼(self-confidence)と自己尊重(self-respect)が統合された概念であるという定義を示しており,Rosenberg(1965)の示すgood enoughの自尊感情と近い定義を行っている。
self-esteemは,自己肯定感と訳されることもある。自己肯定感の定義には,自尊感情と同義であるとみなす立場と,自尊感情の様態の一部を指す概念として用いる立場がある(吉森,2023)。後者の立場も研究者によって多様であるが,本稿ではRosenberg(1965)のgood enoughの自尊感情を自己肯定感や自己受容に対応する概念とみなす見解(箕浦,2021)を支持している。
自己効力感は,ある行動を遂行できるという確信や信念であり,「この課題を達成できる」「この状況に効果的に対処できる」といった課題遂行能力に関する個人の判断のことを指すと定義される(Bandura, 1997)。
学校教員の自尊感情や自己効力感の問題は,2019年に公表されたOECDが行った国際教員指導環境調査(Teaching and Learning International Survey: 以下,TALISとする)の報告書(OECD, 2019)から読み取ることができる。この報告書では,日本の教員の仕事時間は参加国中で最も長く,人材不足が深刻となっており,事務的な業務が多すぎること,保護者の懸念に対処することにおいて他国と比べて大きなストレスを抱えていると示されている(文部科学省,2019)。
さらに,同調査で児童生徒の自尊感情・自己肯定感や学習意欲を高めるといった教師の職務に対して,日本の教員の自己効力感が低いことも指摘されている。原文では,「In your teaching, to what extent can you do the following?」という質問に対して,どの程度できるかという問いへの回答を以て,自己効力感の現状を把握している。その結果,例えば,「児童生徒が学習の価値を見出せるよう手助けをする」の項目は,他国の平均が82.8%であるところに対して,日本の小学校教員が41.4%,中学校教員が33.9%である。他にも,「勉強にあまり関心を示さない児童生徒に動機づけをする」の項目は,他国の平均が72.0%に対して,日本の小学校教員が41.2%,中学校教員が30.6%であり,「児童生徒に勉強ができると自信を持たせる」の項目は,他国の平均が86.3%に対して,日本の小学校教員が34.7%,中学校教員が24.1%となっている。
こうした状況を背景に,この数年間で学校現場における精神疾患による休職者の数が右肩上がりに増加している。文部科学省が発表した令和5年度公立学校教職員の人事行政状況調査における「精神疾患による病気休職者の学校種別・性別・職種別・年代別状況(過去5年間)」の資料によると,精神疾患による病気休職者は,令和2年度に5,203人であったものが,令和5年度には7,119人まで増加しており,早急な対策が求められている(文部科学省,2024a)。
教師のメンタルヘルスの問題を改善するためには,労働時間の削減に取り組むことが最重要の課題である。一方,自己効力感の低さもメンタルヘルスの問題と深く関連する。例えば,先行研究では,自己効力感の低さと教師のバーンアウトには関連性があることが示されている(Kim & Burić, 2020; Sokmen & Kilic, 2019)。自己効力感は自尊感情と正の関連があるため(Bayani & Baghery, 2020; Bayani et al., 2013),教職に対する自尊感情も連動して低下していることが予想される。さらに,領域固有の自尊感情が全般的な自尊感情に影響を与えるというボトムアップモデル理論(Harter, 2006)に従うならば,教員が抱く全般的な自尊感情の低下も懸念される。日本の学校教員に見られる教職に対する自己効力感や自尊感情の低さは,教員の全般的な自尊感情を低下させる形で教員のメンタルヘルスを悪化させる要因の1つになっていると考えられる。
とりわけ,若手教員の教職に対する自己効力感や自尊感情の向上は重要な課題である。先述の文部科学省(2024a)の資料における「病休休職者及び1ヶ月以上の病気休暇取得者の学校種別・性別・職種別・年代別状況」の年代別の内訳を見ると,病気休職者及び1ヶ月以上の病気休暇取得者のうち精神疾患で病気休職をしている年代は20代が最も高い割合となっている。仕事内容に伴うストレスは20代が最も軽いと考えられる。基本的には,歳を重ねるにつれて難しい職務を担当することになり,それに伴う事務仕事や保護者対応等も増えてくるためである。一方,経験の少ない20代のうちは職業に対する自己効力感や自尊感情が形成途上であるため,教職に対する自己効力感や自尊感情の低さが,上の年代よりもメンタルヘルスを悪化させる大きな要因になってくる可能性がある。
こうした若手教員のメンタルヘルスの問題を改善するためには,教師1年目における働き方を調整することはもちろんのこと,大学の教職課程における学生の教職に対する自尊感情や自己効力感の実態やあり方にも着目する必要があるだろう。
先行研究においても,教師を目指す学生の効力感の研究は行われてきた。例えば,春原らは,「教育場面において子どもの学習や発達に望ましい変化をもたらす教育的行為をとることができるという教師の信念」を教師効力感と定義し,教師効力感を測定する尺度を開発し(春原,2007),教育実習や大学での模擬授業が教師効力感に及ぼす影響などを研究している(春原・坂西,2010)。しかし,これらの先行研究からは20年近くが経ち,教育現場の環境には変化が生じている。
例えば,児童生徒の不登校やいじめ,自殺といった深刻な問題が顕在化しており,文部科学省(2024b)によれば,2023年度における小・中学校の不登校児童生徒数は約34万6千人,いじめの認知件数も約73万2千件であり,いずれも過去最多を記録している。児童生徒の自殺者数は前年度よりも減少したが,397人と高水準を維持しており,依然深刻な状況が続いている。こうした諸問題に対応するべく,教職員に求められる資質・能力は大きく変化しており,その中でも「他者との協働」は中核的なスキルとして位置づけられている。特に,文部科学省(2022)が発出した『生徒指導提要』では,「チームとしての学校(チーム学校)」という概念が強調され,教職員のみならず,スクールカウンセラー,ソーシャルワーカー,地域人材,保護者,関係機関などとの多職種・多機関連携による組織的対応の必要性が明確に述べられている(文部科学省,2022)。
こうしたなか,大学の教職課程学生を対象とした新規の教職自己効力感尺度(Yamasaki & Uchida, 2024)と教職自己肯定感尺度(Yamasaki & Uchida, 2023)が発表されている。教職自己効力感は,Bandura(1997)の自己効力感の概念を教職での活動や場面に特化してとらえた概念である(Yamasaki & Uchida, 2024)。教職自己効力感尺度は,近年の教育現場の環境変化を考慮し,保護者や同僚教員といった「他者との協働」に関する効力感が測定できる構成になっている。現代の学校現場では,こうした他者との協働に関するスキルがストレス対処への重要な要因になっている。例えば,草海(2014)では,公立小学校・中学校教師の休職・退職意識に及ぼす諸要因を検討しており,保護者対応や同僚との対人関係ストレスが教師の休職・退職意識の促進要因になっていることを明らかにしている。
Yamasaki & Uchida(2023)の教職自己肯定感は,自尊感情の様態の中でも外的基準や他者との比較に基づく自尊感情ではなく,教職に対する努力や成長感,達成感といった内的要因に根差した自己肯定の感覚であるとされている。教職自己肯定感尺度は,原文では「the Self-Esteem Questionnaire in the Teaching Profession」が正式名称であるが,邦訳にあたっては自尊感情の概念と名称的な差別化を明確にするために,箕浦(2021)の概念整理に依拠しながら,「教職自己肯定感」の用語を使用した。
教職自己肯定感尺度は,先行研究において教職課程の大学生を対象に探索的因子分析及び確認的因子分析によって1因子構造が確認されるとともに,内的整合性及び正規分布をはじめとしたスコア分析が行われている(Yamasaki & Uchida, 2023)。教職自己効力感尺度においても,探索的因子分析及び確認的因子分析によって3因子構造が確認されるとともに,内的整合性やスコア分析が行われている(Yamasaki & Uchida, 2024)。しかしながら,再検査法による信頼性や構成概念妥当性の検討が十分に行われておらず,研究に耐えうる尺度となっているか十分に判断できない。また,教職自己効力感尺度では,十分な内的整合性があると報告されているが,具体的な数値が示されていないため,本研究でも確認する必要がある。
そこで,本研究では,Yamasaki & Uchida(2023, 2024)の教職自己肯定感尺度と教職自己効力感尺度の再検査信頼性を検討することを目的とする。また,Messick(1995)の妥当性の理論における「外的側面の証拠」について,理論的に正の相関が想定される類似の概念との収束的証拠を検証することによって,構成概念妥当性の検討を行うことを目的とする。
信頼性と妥当性の検討は,以下の研究デザイン及び仮説に基づき行う。
再検査信頼性は,1ヶ月の間隔をあけて2回の調査を行い,Pearsonの相関係数を算出して確認する。
構成概念妥当性は次の2つの観点から確認する。第一に,領域固有の自尊感情と全般的な自尊感情は正の関連があることから(Rentzsch & Schröder–Abé, 2018),教職自己肯定感尺度と全般的な自尊感情との正の相関関係から,収束的証拠が確認できる。一方,教職自己肯定感尺度は,good enoughの自尊感情のように,なるべく精神的健康や社会的適応に良好な影響をもたらす適応的な自尊感情を測定する尺度構成で作成されている(Yamasaki & Uchida, 2023)。そのため,本研究では,自尊感情の適応的側面として位置づけられている本来感尺度(伊藤・小玉,2005)との正の相関関係からも,収束的証拠を確認する。本来感とは,「個人が自分らしくいられている全般的感覚」と定義されており,比較的に自尊感情の適応的な側面としての機能を強く持つことが明らかにされている(伊藤他,2011)。
第二に,教職自己効力感尺度は,同系統の尺度である教師効力感尺度(春原,2007)と正の関連があると予想される。また,自己効力感の全般的な尺度である特性的自己効力感の尺度(成田他,1995)とも正の関連があるだろう。さらに,補足的に,教職自己効力感尺度と教職自己肯定感尺度の相関を確認する。自己効力感と自尊感情の間にも正の相関関係があるため(Bayani & Baghery, 2020; Bayani et al., 2013),教職という同領域の教職自己効力感と教職自己肯定感の間にも正の関連が確認されると考えられる。これらの相関分析からも,収束的証拠が得られる。
本研究で再検査信頼性及び構成概念妥当性の検討に取り組み,今後の研究に耐えうる尺度であるのかを検証することによって,教職課程の学生を対象とした教職に対する自己効力感及び自尊感情に関する基礎研究並びに応用研究の発展につながると期待される。
教職課程を履修している国立大学及び私立大学(各1校ずつ)の大学生を対象に,1ヶ月の期間を開けた2回の調査を行った。1回目の調査では347名を対象とし,回答に不備のなかった学生308名(男子123名,女子176名,回答しない9名:平均年齢19.28歳,SD=1.13),2回目の調査では326名を対象とし,回答に不備のなかった学生301名(男子123名,女子162名,回答しない16名:平均年齢19.39歳,SD=1.13)を分析対象とした。また,1回目と2回目のデータを一致させるための仮名加工情報の入力に応じた学生177名(男子68名,女子104名,回答しない5名:平均年齢19.21歳,SD=1.13)を再検査信頼性検討の分析対象とした。なお,参加者はすべて教職志望の学生であり,教育実習未経験者であった。
調査材料調査はMicrosoft Formsを使用したオンライン調査形式で行った。尺度は以下のものを使用した。
教職自己肯定感尺度Yamasaki & Uchida(2023)が作成した尺度を使用した。1因子構造の尺度であり,全12項目で構成されている。回答は7件法(1:まったくあてはまらない~7:非常によくあてはまる)で求めた。
教職自己効力感尺度Yamasaki & Uchida(2024)が作成した尺度を使用した。「学級・授業運営」「生徒指導」「他者との協働」の3因子構造からなる尺度であり,全25項目で構成されている。回答は7件法(1:まったくあてはまらない~7:非常によくあてはまる)で求めた。また,Yamasaki & Uchida(2024)は,高次確認的因子分析によりこれらの3因子は上位の因子に集約されることを良好な適応度をもって確認し,3因子を統合して全25項目の合計得点で算出された上位因子を全般的教職自己効力感としている。
教師効力感尺度春原(2007)が作成した尺度を使用した。「学級管理・運営」「教授・指導」「子ども理解・関係形成」の3因子構造からなる尺度であり,全26項目で構成されている。回答は5件法(1:そう思わない~5:そう思う)で求めた。妥当性の検討は,教育学部の学生及び大学院生を対象に,類似の教師効力感,一般性セルフ・エフィカシー,教育実習不安との相関関係から検討されている。信頼性については,「学級管理・運営(α=.90)」「教授・指導(α=.79)」「子ども理解・関係形成(α=.79)」と,内的整合性の高さが確認されている。
特性的自己効力感尺度成田他(1995)が作成した尺度を使用した。1因子構造からなる尺度であり,全23項目で構成されている。回答は5件法(1:そう思わない~5:そう思う)で求めた。妥当性の検討は,13歳から92歳を対象に,抑うつ性尺度,自尊感情尺度,性役割尺度,健康に関する主観的評価との相関関係から検討されている。信頼性については,高い内的整合性(α=.88)と2週間の間隔をあけた再検査によって高い再検査信頼性(r=.73)が確認されている。
本来感尺度伊藤・小玉(2005)が作成した尺度を使用した。1因子構造からなる尺度であり,全7項目で構成されている。回答は5件法(1:あまりあてはまらない~5:あてはまる)で求めた。妥当性の検討は,大学生を対象に,自尊感情やwell-beingとの関連などから検討されている。信頼性については,高い内的整合性(α=.79)と4ヶ月の間隔をあけた再検査によって高い再検査信頼性(r=.70)が確認されている。
倫理的配慮調査実施者が口頭で調査概要について説明し,インフォームド・コンセントを行い,調査への協力に同意を得られた者を調査参加者とした。調査票の冒頭においても,調査は匿名で行い個人が特定されることはないこと,回答はいつでも中断することができること,回答は任意であり不参加及び中断をしても不利益は生じないこと,調査への参加で気分が優れなくなった場合は公認心理師の資格を持つ教員が相談対応に応じること,調査結果は学会及び論文等で発表すること,調査には15分程度の時間がかかること,匿名であるため回答後の個別データの削除には応じることができないことを,オンライン調査票の画面に表示して伝えた。これらの説明を読み,回答と研究での公表に「同意する」という項目と,「このアンケートは,回答者が真面目に答えることを必須として実施します。書かれていることをきちんと読んで,真面目に答えていただけますか?」にチェックを入れた者のみ,次の回答に進むように設定した。続いて,匿名性を保ちながら2回の調査データを一致させるために,名前のイニシャルと携帯電話番号の下4桁の数字を組み合わせた仮名加工情報の入力を求めた。収集したデータは,匿名加工情報(ID)に置き換えて管理・分析を行った。本研究は信州大学全学教育センター等におけるヒトを対象とした教育研究に関する倫理委員会による審査及び承認を受けた(承認番号第R06-09)。
分析ソフトはSPSS30とHAD18.008(清水,2016)を使用した。
信頼性教職自己肯定感尺度および教職自己効力感尺度の信頼性を検討するため,調査1回目と調査2回目で得られたデータを用いて分析を行った。まず,各尺度の内的整合性を確認するためにCronbachのα係数を算出した。さらに,再検査信頼性を確認する目的で,調査1回目と調査2回目の得点の間のPearsonの相関係数を算出した。
その結果,内的整合性は全体として十分に高い値が確認された(Table 1)。再検査信頼性は,教職自己肯定感がr=.812, p<.001,教職自己効力感における学級・授業運営がr=.745, p<.001,生徒指導がr=.752, p<.001,他者との協働がr=.751, p<.001,全般的教職自己効力感がr=.811, p<.001であった(Table 2)。
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教職自己肯定感尺度と教職自己効力感尺度の構成概念妥当性を検討するために,調査1回目及び調査2回目の2つのデータを用いて,教師効力感尺度(春原,2007),特性的自己効力感尺度(成田他,1995),本来感尺度(伊藤・小玉,2005)とのPearsonの相関係数を求めた(Table 3, Table 4)。
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教職自己肯定感尺度の妥当性を検討するために本来感尺度との相関関係を算出したところ,正の相関が示された(1回目:r=.504, p<.001,2回目:r=.527, p<.001)。
教職自己効力感尺度について,全般的教職自己効力感及びその3下位因子(学級・授業運営,生徒指導,他者との協働)と,特性的自己効力感尺度及び教師効力感尺度の3下位因子(学級管理・運営,教授・指導,子ども理解・関係形成)との相関係数を算出したところ,すべての変数間で正の相関が示された。
具体的には,全般的教職自己効力感との相関係数は,特性的自己効力感の1回目がr=.446, p<.001,2回目がr=.486, p<.001,教師効力感「学級管理・運営」の1回目がr=.631, p<.001,2回目がr=.675, p<.001,教師効力感「教授・指導」の1回目がr=.485, p<.001,2回目がr=.526, p<.001,教師効力感「子ども理解・関係形成」の1回目がr=.488, p<.001,2回目がr=.534, p<.001となった。
学級・授業運営との相関係数は,特性的自己効力感の1回目がr=.394, p<.001,2回目がr=.448, p<.001,教師効力感「学級管理・運営」の1回目がr=.555, p<.001,2回目がr=.640, p<.001,教師効力感「教授・指導」の1回目がr=.482, p<.001,2回目がr=.534, p<.001,教師効力感「子ども理解・関係形成」の1回目がr=.450, p<.001,2回目がr=.514, p<.001となった。
生徒指導との相関係数は,特性的自己効力感の1回目がr=.353, p<.001,2回目がr=.411, p<.001,教師効力感「学級管理・運営」の1回目がr=.618, p<.001,2回目がr=.664, p<.001,教師効力感「教授・指導」の1回目がr=.373, p<.001,2回目がr=.478, p<.001,教師効力感「子ども理解・関係形成」の1回目がr=.424, p<.001,2回目がr=.536, p<.001となった。
他者との協働との相関係数は,特性的自己効力感の1回目がr=.444, p<.001,2回目がr=.479, p<.001,教師効力感「学級管理・運営」の1回目がr=.513, p<.001,2回目がr=.534, p<.001,教師効力感「教授・指導」の1回目がr=.438, p<.001,2回目がr=.422, p<.001,教師効力感「子ども理解・関係形成」の1回目r=.430, p<.001,2回目がr=.399, p<.001となった。
補足的な分析として,教職自己肯定感尺度及び教職自己効力感尺度並びにその3下位因子との間の相関係数を算出した(Table 5, Table 6)。その結果,1回目は,教職自己肯定感に対して,全般的教職自己効力感の相関係数がr=.703, p<.001,学級・授業運営がr=.627, p<.001,生徒指導がr=.602, p<.001,他者との協働がr=.650, p<.001であった。2回目は,教職自己肯定感に対して,全般的教職効力感の相関係数がr=.759, p<.001,学級・授業運営がr=.709, p<.001,生徒指導r=.665, p<.001,他者との協働がr=.711, p<.001であった。
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本研究では,教職自己肯定感尺度及び教職自己効力感尺度の再検査信頼性と構成概念妥当性における収束的証拠の検討を行うことを目的としていた。
第一に,再検査信頼性については,教職自己肯定感尺度がr=.812,教職自己効力感尺度の各指標がr=.745–.811となり,十分に高い値が示された。また,補足的に検討した内的整合性においても,すべての指標でα=.700以上の良好な値が得られた。
第二に,構成概念妥当性の検討について,教職自己肯定感は本来感とr=.504(1回目),r=.527(2回目)と正の相関が示され,仮説が支持された。次に,教職自己効力感尺度においても,同系統の尺度である教師効力感尺度の各指標および特性的自己効力感尺度と正の相関が示され,仮説が支持された。一方,その相関係数に着目すると,教職自己効力感の各指標と特性的自己効力感の相関係数がr=.353–.446(1回目),r=.411–.486(2回目)であることに対して,教職自己効力感の各指標と教師効力感の各指標の相関係数はr=.373–.631(1回目),r=.478–.675となっており,全体的に相関係数が強い傾向にあった。これは,自己効力感が領域固有の概念であることから,領域として近い教職自己効力感と教師効力感の関連が強くなったと考えられる。
さらに,指標ごとの関連を見ると,次のようなことが分かる。教職自己効力感「学級・授業運営」は「みんなで協力する学級をつくることができる」といった学級運営に関する要素と,「授業は,子どもが興味・関心をもてるように,発話や教材を工夫できる」「一人一人の子どもの理解度の違いを考慮して,授業をすることができる」といった深い児童生徒理解に基づいた授業運営に関する要素で構成されている。そのため,近い概念である教師効力感の「学級管理・運営」と最も高い相関関係を示しながら(1回目:r=.555,2回目:r=.640),「教授・指導」「子ども理解・関係性」の2つの指標とも一定の相関関係が示されていた(1回目:r=.450–.482,2回目:r=.514–.534)。教職自己効力感「生徒指導」は,「自分が担当している学級では,学級崩壊が起きないようにできる」「いじめを起こさない,許さない,学級をつくることができる」といった生徒指導に関する要素が中心になっている。そのため,教師効力感の3つの指標の中でも,「問題のある子どもに授業を妨害させないようにすることができる」「児童・生徒を管理・指導することができる」といった項目で構成される「学級管理・運営」の指標と比較的に高い相関係数を示した(1回目:r=.618,2回目:r=.664)。同様に,教職自己効力感「他者との協働」も,教師効力感の3つの指標のなかで「学級管理・運営」の指標と比較的に高い相関を示した(1回目:r=.513,2回目:r=.534)。教職自己効力感「他者との協働」の項目内容は,「子どものことで困ったことがあれば,一人で抱え込まずに,他の教員に相談することができる」「必要があれば,保護者と相談したり,協力したりすることができる」というものである。そして,現代の教育現場では,学級管理や運営を円滑に行っていくために,他の教員や保護者,管理職との連携・協働といった「チーム学校」として働き方が強く求められており,教職課程においてもその重要性が指導されていることから,教師効力感の「学級管理・運営」と比較的に高い相関係数が示されたと推測される。以上のような相関係数の強さからも,収束的証拠の一部が読み取れると考えられる。
以上のように,Yamasaki & Uchida(2023, 2024)の先行研究で未検証であった再検査信頼性と構成概念妥当性の一部(収束的証拠)が検証されたことで,今後の基礎研究並びに応用研究への使用に耐えうる尺度であることが確認された。
一方で,信頼性および構成概念妥当性については更なる検討が必要になると考えられる。
まず,信頼性について,本研究では1ヶ月の時間間隔を設けて再検査信頼性を確認してきた。しかし,領域固有の教職自己肯定感や教職自己効力感は,教職課程の学びの経験や実践経験等の要因によって,長期的には変化する可能性がある。そのため,半年や1年といったより長期のスパンでの再検査信頼性の検討も,将来的な課題として重要である。特に縦断研究や介入研究に本尺度を応用する際には,操作による結果かどうかを検証するための一助として,さらに長期の安定性のデータが必要になろう。
構成概念妥当性についても,更なる検討が求められる。本研究では収束的証拠を明らかにしてきたが,今後の研究では弁別的証拠についても明らかにする必要があると考えられる。特に,教職自己肯定感尺度は,自尊感情の適応的な側面として概念定義が行われていることから,優越感・随伴性自尊感情といった自尊感情の不適応的な側面の概念(伊藤他,2011)をはじめとした,理論的に類似する概念との弁別的証拠を確認することが重要である。これにより,理論通りの自尊感情の様態を測定することができているかどうか,構成概念妥当性をより明確に示すことができる。
また,先行研究では,自尊感情や自己効力感は精神的健康や社会的適応と正の関連を示す知見が多いことから(Kim & Burić, 2020; Sokmen & Kilic, 2019),教職自己肯定感尺度および教職自己効力感尺度と精神的健康や社会的適応に関する外的側面の指標との関連からも検討も可能である。近年の教師のメンタルヘルスの問題を考慮すると,上記の観点からの妥当性検証も将来的な尺度の利用価値を高めるものになると考えられる。
さらに,尺度の利用可能性を広げるためには,より多角的な視点から検証が重要になる。例えば,教職に対する自尊感情や自己効力感が高い学生は,低い学生と比べて教職課程の講義への参加度や成績が良好になることが確認されれば,外的側面に基づく多角的な妥当性の証拠が得られる。また,教職への就職希望率が高くなるといった,将来の行動や態度との関連を検討することができれば,教職課程学生を対象としたアセスメントツールとしての利用可能性が示せるだろう。
以上のように,より多角的な妥当性の検証には研究余地が残されているが,本研究によって,今後の基礎研究並びに応用研究の発展可能性が開けたと言えるだろう。今後の基礎研究ならび応用研究で尺度が活用されることで,教職課程の更なる充実と教育現場の問題解決に寄与することが期待される。
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本論文に関して,開示すべき利益相反関連事項はない。