2018 年 43 巻 2 号 p. 157-163
目的:安静時標準12誘導心電図(以下ECG)の自動解析による左房負荷の意義について検討する.
対象と方法: 2012年4月~2016年3月にECGを施行し,自動解析にて左房負荷と判定された症例を抽出し,目視にてその診断精度を評価した.次に,ECGにて左房負荷を有し,かつ同一日に心エコー図検査を施行した例を対象に左房サイズと心機能を解析した.
結果:対象期間中に自動解析にて左房負荷かつ心拍数正常と判定された症例は131例であった.115例(88%)は目視でも左房負荷の診断基準を満たした.このうち同一日に心エコー図検査を施行した症例は48例で,左房前後径の拡大は34例(71%),三方向いずれかへの拡大は37例(77%),心尖部四腔断面single plane Area-Length法にて求めた左房容積係数の拡大は47例(98%)に認めた.左室駆出率が保持されている症例は25例(52%)に認め,このうち18例(72%)は左室拡張障害ありと判定され,左室拡張能正常と判定したのは肺性心の1例(4%)のみであった.
考察:ECG自動解析による左房負荷は,左房拡大の存在を示唆し左室拡張障害を診断するうえで有用な所見と考えられた.また,心形態および機能上,正常症例を認めなかったことは臨床的意義が高い.
結語:ECG自動解析による左房負荷の診断精度は高く,心疾患や心不全の存在を考慮する指標の一つとして有用であると考えられた.