超音波検査技術
Online ISSN : 1881-4514
Print ISSN : 1881-4506
ISSN-L : 1881-4506
研究
腹部超音波検査時のベッド高が検者の身体負担と探触子の操作性に与える影響について
丸山 勝森 貴子三枝 義信小田 福美中林 智保子久次米 公誠橋本 直明野曽原 由香鈴木 浩之下村 義弘
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 43 巻 3 号 p. 249-258

詳細
抄録

はじめに:超音波検査時のベッドの高さが,検者の身体負担と探触子の操作性に与える影響を検討した.

対象と方法:対象は,日本超音波医学会認定の超音波検査士資格(消化器領域)を取得している8名とした.方法は,ベッドが座面と同じ高さを基準とし,±5 cm, ±10 cmの5段階の高さについて評価した.人体模型に対して指定したプロトコル(①:右肋骨弓下走査~肋間走査,②:右側腹部走査,③:左側腹部走査)で走査を行い,その間の筋電図,身体角,探触子の操作性について測定した.測定筋は右尺側手根屈筋,右橈側手根伸筋,右僧帽筋,右菱形筋とした.身体角は,体幹角についてビデオ画像と加速度計で,右肩拳上角についてはビデオ画像のみで測定した.探触子の操作性については,右手背に加速度計を装着し計測した.

結果:①の走査では右尺側手根屈筋(相対高p: 0.025,座高比p=0.029,上肢長比p=0.040,座高-上肢長比p=0.007)と右僧帽筋(相対高p=0.017,座高比p=0.023,上肢長比p=0.021,座高-上肢長比p=0.036)についてすべての評価指標でベッドが低い方が有意に筋負担は小さく,右菱形筋については座高-上肢長比(p=0.016)において,ベッド高が座面高に近づくにつれ減少した.肋間走査(プロトコル終了時)ではベッドが低くなると,右肩拳上角は小さくなる傾向であった(相対高p=0.001,座高比p=0.001,上肢長比p=0.002,座高-上肢長比p=0.001).②の走査では右菱形筋について,ベッド高がやや高い方が筋負担は有意に小さかった(座高-上肢長比p=0.003).体幹角は,ベッドが低いとベッド側へ体幹が傾く傾向があった(ビデオ開始時 相対高p=0.009,座高比p=0.007,上肢長比p=0.005,座高-上肢長比p=0.032)(加速度開始時 相対高p=0.011,座高比p=0.017,上肢長比p=0.010,座高-上肢長比p=0.042)(ビデオ終了時 相対高p=0.012,座高比p=0.009,上肢長比p=0.006,座高-上肢長比p=0.048)(加速度 終了時相対高p=0.011,座高比p=0.016,上肢長比p=0.014,座高-上肢長比p=0.032).③の走査ではベッドがやや低い方が右僧帽筋(相対高p<0.001,座高比p<0.001,上肢長比p<0.001,座高-上肢長比p<0.001)と右菱形筋(相対高p=0.022,座高比p=0.022,上肢長比p=0.043,座高-上肢長比p<0.001)で有意に負担が小さかった.一方でベッドが高い方が体幹の傾きは小さいものの(ビデオ開始時 すべての評価指標でp<0.001)(加速度開始時 座高-上肢長比p=0.002他の評価指標はp<0.001)(ビデオ終了時 相対高p=0.002,座高比p=0.002,上肢長比p=0.001,座高-上肢長比p=0.007)(加速度終了時すべての評価指標でp<0.001),鉛直にはならなかった.右肩拳上角にはベッド高の影響がみられなかった.探触子の操作性については,いずれのプロトコルでもベッド高の影響がみられなかった.

結語:腹部超音波検査時にベッド高を調整することで,検者の身体負担が軽減することが,また,検者は走査中,身体負担よりも探触子の操作性を優先していることが示された.

著者関連情報
© 2018 一般社団法人日本超音波検査学会
前の記事 次の記事
feedback
Top