超音波検査技術
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若手研究奨励賞―研究
心内膜自動トレースによる左室駆出率計測の精度に関する検討
冨田 沙希種村 正佐々木 伸子由井 恵美堤 由美子片岡 容子渡邊 伸吾
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2018 年 43 巻 5 号 p. 564-572

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抄録

目的:心内膜自動トレースによる自動計測法が実用化され,精度,再現性が高い方法として注目されている.しかし,装置間の差については検討されておらず,異なる装置間では左室駆出率(LVEF)に差があることが実感されるため,その精度について検討した.

対象と方法:洞調律で描出良好な74例(58±12歳,男67例,LVEF平均52±14%,LVEF≤50% 29例)を対象とした.超音波診断装置はA社製,B社製を用いた.それぞれの装置の自動計測法を用いて,左室収縮末期および拡張末期容量(ESVおよびEDV)とLVEFを計測した.さらに,手動で補正を加えて上記指標を再計測した.また,スタンダードとして上記指標を用手法(Biplane disk summation法)で計測した.各計測法より得られた計測値を単回帰分析およびBland–Altman解析を用いて統計学的に解析した.

結果:自動計測法で求められたESV, EDVおよびLVEFは用手法の計測値と相関関係が認められたものの,計測の系統誤差や手動補正の影響に装置間の差を認めた.A社製装置では,左室容量が増加するにつれEDV, ESVが過小評価されたが(誤差:(EDV)−11.7 ml; (ESV) −9.1 ml),EFは正確であった(誤差:1.2%).手動補正を行うと,EDV, ESVは正確になり(誤差:(EDV)2.5 ml; (ESV) 1.1 ml),EF計測に影響はなかった(誤差:0.7%).一方,B社製装置では,ESVの過小評価(誤差:−13.1%)により,EFは減少するにつれ過大評価した(誤差:7.4%).同様の手動補正を行ったとしても,誤差は解消されることはなかった(誤差:7.5%).

結論:左室容量やEFの計測,手動補正の効果に装置間の差がある.

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© 2018 一般社団法人日本超音波検査学会
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