超音波検査技術
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症例報告
鈍的外傷を契機に発症した上腸間膜動脈・腹腔動脈解離の1例
田中 裕章浅野 幸宏高橋 一昭
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2018 年 43 巻 6 号 p. 708-713

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抄録

症例は60歳台男性.右側腹部痛を主訴に来院.既往歴,家族歴ともに特記事項なし.飲酒後,駅構内の線路上で倒れているところを発見され,当院救急科搬送となった.外傷精査目的に腹部超音波検査(US),造影CT施行となった.USでは肝S4~右葉にかけて非常に不均一な領域を認めた.また肝臓周囲にecho free spaceも認められ,肝損傷が疑われた.腹部大動脈を観察すると上腸間膜動脈(Superior mesenteric artery: SMA)と腹腔動脈(celiac artery: CA)に一部紡錘状に変化している部位を認めた.さらにSMA紡錘部内を観察すると内腔に剥離したフラップ(flap)を示唆する高輝度線状エコーを認めSMA解離が疑われた.CAは紡錘状変化のみでflapは明らかではなかったがADF(Advanced Dynamic Flow)で二腔に描出され解離を疑った.造影CTでは肝S4~右葉にかけて低吸収域を認めた.腹部造影CTでは同部位は造影されずextravasation(造影剤の血管外漏出)も認められ,肝損傷が疑われた.SMA·CA共に内腔に解離を疑うflapを認めた.大動脈解離を伴わない孤立性SMA解離はまれとされている.その中でもCA解離も合併した症例は非常に稀有であり,今回鈍的外傷を契機に発症したSMA·CA解離の症例を経験したので文献的考察も交えて報告する.

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© 2018 一般社団法人日本超音波検査学会
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