超音波検査技術
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研究
成人患者における先天性心房中隔欠損症の経胸壁心エコー図検査での検出感度:欠損サイズと右室拡大の比較
岩﨑 美穂香岡庭 裕貴山下 英治戸出 浩之吉住 聖子上嶋 朋美小林 康之
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2019 年 44 巻 2 号 p. 221-229

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抄録

目的:成人の心房中隔欠損症(ASD)において,欠損サイズと経胸壁心エコー図検査(TTE)での検出感度および右室サイズの関係を明らかにすること.

対象と方法:対象は,2010年10月~2016年7月に,TTEに次いで経食道心エコー図検査(TEE)を施行した4,507例のうち,TEEにてASDと診断された86例(63±14歳,男性39例,女性47例)であり,欠損型は二次孔型:s型74例,静脈洞型:sv型9例,冠静脈洞型:cs型3例であった.ASDの最大欠損孔により<5 mm(S群:38例,s型34例,sv型1例,cs型3例),5~10 mm(M:群:11例,s型9例,sv型2例),10 mm≦(L群:37例,s型31例,sv型6例)に分類した後,各群のTTEでのASD検出感度を算出した.また,心尖部四腔断面にて右室基部および中位の短径(RVD base, RVD mid),右室長径(RVD long)を,大動脈弁レベル短軸像にて右室流出路(RVOT)の近位部および遠位部径(RVOT Prox, RVOT Distal)を計測し,それらの体表面積補正値(INDEX:I)を各群で比較検討した.

結果:全対象のTTEのASD検出感度は50.0%,S,M,L群ではそれぞれ10.5%,45.5%,91.9%と小欠損症例の検出感度は低値であった(p<0.01).RVD base IおよびRVD mid IはL群がS群に比し有意に大であった(Base: 25.2±4.6 vs. 21.5±4.2 mm/m2, p<0.01, Mid: 24.5±5.5 vs. 18.1±3.6 mm/m2, p<0.01).RVOT Prox IおよびRVOT Distal Iは,L群(Prox: 22.1±4.8 mm/m2, Distal: 19.6±3.4 mm/m2)がS, M群に比し有意に大であった(Prox: 18.0 ±3.5 and 16.9 ±3.0 mm/m2, p<0.01 and p<0.05, Distal: 16.1±1.6 and 15.9±1.9 mm/m2, p<0.01).

考察と結語:欠損孔の大きいASD例では右室拡大が生じることからTTEでの検出感度は高いが,欠損孔の小さいASD例では右室容量負荷を示唆する右室拡大の所見は認めないことから,ASDが疑われず,TTEでの検出感度が著明に低下することが明らかとなった.

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© 2019 一般社団法人日本超音波検査学会
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