超音波検査技術
Online ISSN : 1881-4514
Print ISSN : 1881-4506
ISSN-L : 1881-4506
症例報告
超音波検査が有用であった瘤形成を伴う孤立性上腸間膜動脈解離の1例
佐々木 祐太八鍬 恒芳丸山 憲一工藤 岳秀三塚 幸夫原 真弓内村 智也佐々木 伸章川田 幸太矢尾 尊英藤井 毅郎永井 英成
著者情報
ジャーナル 認証あり

2025 年 50 巻 2 号 p. 129-136

詳細
抄録

症例は70代男性.20xx–4年当院において胃癌および腎細胞癌術後,上腸間膜動脈(superior mesenteric artery: SMA)に限局した解離および瘤形成を認め,他院でのCTにて経過観察となっていた.20xx–1年のCTで瘤径の拡大を認めたため,20xx年に当院心臓血管外科を紹介受診された.超音波検査にてSMAは起始部付近から紡錘状の瘤状拡張を認めた.瘤内には線状高エコーを認め,解離した動脈壁と思われた.線状高エコーより腹側の偽腔と考える腔には血管壁に沿って偏在性の充実性エコーが充満しており,その影響により真腔と考える腔は狭小化していた.充実性エコー主体の偽腔には血流シグナルを認めず,ほぼ血栓閉塞していると思われたが,中枢側の一部にエントリーを疑う所見を認めた.末梢側には,リエントリーを疑う所見は認めなかった.瘤径の拡大する原因は,真腔から偽腔への流入路であるエントリーの開存およびリエントリーの閉鎖に伴う偽腔圧の上昇による影響と考えられた.瘤径は1年で約1 cmの拡大傾向にあり,今後さらなる偽腔の拡大による動脈瘤の破裂や真腔の狭小化による腸管虚血の合併も考えられたため,侵襲的治療の方針となり,ステントグラフト留置術が施行された.孤立性上腸間膜動脈解離(isolated superior mesenteric artery dissection: ISMAD)は大半が保存的加療となることが多いが,本症例のように瘤形成やその拡大を認める場合は,動脈瘤の破裂や腸管虚血などの重篤な解離合併症を引き起こす危険性もある.そのため,超音波検査をはじめとする画像検査にて,侵襲的な治療を考慮した定期的な経過観察が重要であると考えられた.超音波検査によりISMADの形態や血流動態を詳細に観察することができ,その後の治療方針と経過観察に有用であった1例を経験したので,文献的考察を含め報告する.

著者関連情報
© 2025 一般社団法人日本超音波検査学会
次の記事
feedback
Top