Intersphincteric resection(ISR)の登場によって直腸癌の肛門温存手術の割合は増加したが、その適応は施設によって異なる。静岡がんセンター195例の下部直腸癌根治手術の経験で77%に肛門温存手術が、22%にISRが行われた。ISRの方法は腹腔操作で大部分の剥離を終え、肛門操作は短時間で行い局所再発のリスクを減らすよう心掛けた。その結果、195例の累積3年無再発生存率は86%(Stage I:96%、Ⅱ:88%、Ⅲ:73%)と良好だった。また、ISR後の排便は1日3回以内が41%で最も多いものの、ソイリング腸性55%、パット使用59%だった。肛門温存術後は排便に関するQOLが低下するが、生活全体のQOLは意見が分かれる。癌手術としての根治性とともに、患者の性格や社会復帰後の生活も考慮して術式選択をするべきである。