2022 年 38 巻 3 号 p. 145-153
低位前方切除術など直腸疾患に対する括約筋温存手術の際には、しばしば一時的ストーマ造設が行われ、ループ式回腸ストーマかループ式結腸ストーマが選択される。それぞれの適応、問題点や注意点について過去の報告に基づいて検討した。回腸ストーマでは、造設中のhigh output syndromeやそれに伴う脱水、腎障害、ストーマ周囲皮膚障害、閉鎖後の腸閉塞が有意に多いことが報告されており、これら合併症のリスクの高い症例では結腸ストーマの造設を考慮することも選択肢と考えられた。また結腸ストーマでは、造設中のストーマ脱出や傍ストーマヘルニア、閉鎖後の腹壁瘢痕ヘルニアが有意に多いことが報告されており、主な原因である貫通孔の大きさを必要最小限とする工夫や、リスクの高い症例では回腸ストーマの造設を考慮することも選択肢であると考えられた。以上、回腸ストーマ、結腸ストーマにはそれぞれ一長一短があり、それぞれの利点を生かせるような使い分けが重要と考えられた。