日本デザイン学会研究発表大会概要集
日本デザイン学会 第50回研究発表 50周年記念大会
セッションID: B-06
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A. W. N. ピュージンがみた「建築の乱痴気騒ぎ」
19世紀中葉のイングランドにおける建築様式事情
*近藤 存志
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抄録

熱心なゴシック・リヴァイヴァリストであった建築家A. W. N. ピュージンは、19世紀前半のイギリスにおける建築趣味に「異教主義的」な諸傾向を見出すとともに、そうした傾向を激しく批判した。ピュージンによれば当時のイギリス建築界は、建築の様式を生成されるものとしてではなく、異教的な歴史上の様式の数々から採択されるものとして位置付けていた。ピュージンはこうした有様を「建築の乱痴気騒ぎ」と表現して、その異教的な様式を復興、折衷する傾向を揶揄した。また、こうした状況において名声を謳歌する当時の建築界の指導者たちは、ピュージンの目には、「まるで、あらゆる世紀とあらゆる国々の装いによって飾り立てられたような」人々であり、「一晩のうちに二、三の異なる衣装を身に纏う」ような、いわば「道化師のような存在」としか写らなかった。本稿では、19世紀中葉当時のイギリス建築界に広く定着していた数々の「異教的様式」に関するピュージンの言説を取り上げ、彼が自分自身の生きた時代の建築・デザインの諸相を如何に理解し、自らが推進したゴシック・リヴァイヴァル運動の正当性を論証したのかという点について検討する。

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© 2003 日本デザイン学会
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