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本研究は,使いやすい製品やサービスのための人間中心設計を拡張してより総合的なデザインアプローチを提案することを目的とする。インタラクティブな製品やシステムに対して,より使いやすくするために人間中心の設計手法としてユーザーセンタード・デザイン(UCD)というアプローチが導入されている。また,コミュニケーションも主に機能に基づいている場合が多い。しかし,人間は機能だけで判断するのではなく,感性や感情によっても判断する。たとえば,使いにくいけど愛着のある製品,使っていて楽しいソフトウエア,わくわくするWebサイトなど,使いやすさという視点だけではユーザーを満足することはできない。UCDを基本に展開することのできるアプローチとしては,いろいろなユーザーのためのユニバーサルデザイン,きもちや感性を考慮して魅力的な商品やサービスにするデザイン,ユーザーと企業の個性を考慮したブランドデザイン,そしてそれらの総合的な体験を考慮するユーザーエクスペリエンス・デザインなどが考えられる。ここでは,その中でもきもちや感性を考慮して魅力的な商品やサービスにするデザインアプローチを「スマイルデザイン」という名称で定義し,どのようにアプローチするのか検討する。