試行錯誤過程はデザイン思考に必然的に含まれるものであり、一般的には問題解決における目的・手段関係の中に現れるといえる。 近年、多くのプロジェクト管理ソフトが存在し、それらの中にはプロジェクト構築をタスクユニットの組み合わせによって行うことで、やむをえない試行錯誤を許容したツールもある。しかし、それらの目的は創造的思考の支援には適していないといえる。なぜなら、それらは、そのプロジェクトの目的に含まれる視点以外は受け容れず、結局、試行錯誤をできるだけ減らして業務の効率を上げることを目指しているからである。創造的思考においては、試行錯誤を減らすことよりも、むしろそれをより深い思考に向けさせ、当面の目的よりさらに高次で抽象度の高い目的・手段関係に気づかせるようにさせることが必要だからである。 これを可能にさせるため、それまでの試行錯誤で失敗したり行き詰まったケースの原因を記録しておくことが必要である。それらは、デザイン当事者が一定の「あたため期間」を経て、再び課題に戻った際、飛躍に結びつく手がかりを与えてくれる可能性があるからである。