18世紀の産業革命以降,デザインの分業化・専門化は,同じ土俵を持たないことによるデザインの言語や概念,価値観などにおける差異を生じさせ,デザイン情報の共有や協調デザインにおける難しさという課題を生み出した.そして,大規模事故の発生,大量廃棄による環境問題,精神的な充足の必要性など,デザインが引き起こした多くの問題に対し,統合的な対応をせまられる状況となっている.さらに,21世紀のデザインは,これら現存する多くの諸問題に加えて,将来の社会変化により顕在化する問題への対応が求められることから,現在と将来の問題に対応する新たなデザイン方法論が必要になると考えられる. 本報においては,一般性を有するデザイン理論構築の一助とすべく,デザイン理論の枠組みとしての多空間デザインモデルを提示した.また,デザインという人間の創造的行為を理論的に説明する新たな科学である「デザイン科学」における位置づけとデザイン推論の枠組みとの関係を明示した.さらに,現在と将来の問題に対応する新たなデザインの方向性として,タイムアクシス・デザインを示した.