21世紀に入り、経済・産業活動がグローバルに過熱化するにつれて、環境問題が益々世界に重くのしかかってきている。多消費型のライフスタイルは先進国ばかりかBRICSをはじめとする発展途上国にも広がり、地球温暖化、地下資源の枯渇、食糧危機、自然破壊などを引き起こしている。こうした状況を脱却するには、単に科学技術の発展や社会制度の改革に力を入れるのでは不十分であり、人々がエネルギー多消費型の物質文明から離れたところに真の幸せな暮らしがあることに気付き、サスティナブルな社会を皆で築くモチベーションを持てるようにしなければならない。そうした方向に向かう新しい価値観として私は、これまで「知足豊饒」を提唱してきた。これを少しでも具体化するために、デザインにどのような可能性があり、デザイナーが多くの分野と連携しながらどのような役割を果たせるかを考察した。