本研究は、鑑賞者に深い感銘と思索を与えるのが芸術作品としてのメディアアートと言えるが、技術のみの目新しさを競うような表現で終わってしまう作品が多い、という社会的背景から研究を進めた。本研究では映像表現を活用した作品を制作し、普段できない面白い体験が誰でもできるメディアアートを制作することを目的とする。そうすることで、伝わりにくい情報を伝え、人々の感情をゆさぶる方法を考えることができる。 本研究の初期段階では様々なタイプの映像作品を作り、フィードバックを得ながら最終成果物にむけて研究を進めた。最終成果物として、これまでの評価結果を基に、メディアインスタレーション「映り込ムービー」、映像作品「ピクトグラム人間」と動画作品の説明用パネル「iPanel」の3点を制作した。コンセプトは、アイデア展開とプロトタイプの結果から、普段あまりアートに触れない人でも体験しやすいという理由から「生活の中にとけこむようなメディアアート」とした。また、ストーリーを重んじることは、ユーザーエクスペリエンス的な視点が必要と感じたことから「いつもと違った不思議な体験ができる」と設定した。