「Film Cycle(フィルムサイクル)」は,8ミリフィルムや写真など主に個人が20世紀に撮影・記録した映像群(個人映像)を公共財と位置づけ,そこに映し出された,大きな歴史に回収されない貴重な個々の物語に価値を見いだしながら,それらが現代のコミュニティの中で新しい物語を紡ぎ出すための手段となり得るかを,住民と行ういくつかのプログラムを通じて検証するプロジェクトである。個人映像の撮影者や被写体となった人物へのインタビュー調査を通して,ここでは[地域で撮影された昔の写真をカラーにする]プログラム,[物語収集・共有のための8 ミリフィルム鑑賞会]プログラム,[VRを利用したメディアコンテンツ制作]プログラムを計画・実践した。多様な個人映像利用の手続きそのものをデザインと位置づけてプロジェクト展開した結果,映像が単に地域コミュニティの魅力を発信するコンテンツ指向ではなく,「映像が誰によって,どのような過程を経て記録されたか」に関心を引きつけるプロセス指向,または「撮影者の記憶を他者が共有できる」メディア指向など,重層的かつ統合的に機能することが明らかになった。