世界人口は爆発的な増加傾向にあり、深刻な食糧危機が危惧されている。特に動物性タンパク質の生産には多くのエネルギーが必要なため、既存の畜産業だけでは解決が困難である。そこで注目されているのが昆虫食である。そこでコオロギのメリットに注目し、その大量生産、安定供給のための飼育システムの設計プロジェクトを立ち上げた。本研究では、既に昆虫を食している東南アジア、特にカンボジア、ベトナム、タイにおけるケーススタディーを通して、昆虫食産業としての可能性を「食べる」側の視点、「生産する」側の視点から俯瞰した。特にタイに存在するコオロギファームの視察を通して、多くの可能性を発見した。それは、小規模かつ安定的な生産が可能であること、道具等が小さく誰でも参加が可能であること、ペストコントロール等が簡単であること、立体的飼育による効率化、臭気問題が無いこと、そして近隣農業との共存が容易であることなどが挙げられる。これらのことから、現在研究を進めているコオロギ養殖システムの技術確立と、その効率化による収穫量の安定が、今後のコオロギ食、ひいては、昆虫食の普及の一助となることが確認された。