1996 年 43 巻 2 号 p. 11-20
本論の目的は乗用車の創生期(1903年〜1956年)の派生車を含むフォードのモデルチェンジの過程を調べ,その要因と構造を考察することにある。モデルチェンジの経緯を見るため,外観の側面画を主とする「モデルチェンジ年表」を作成した。4ドアセダン,クーペ,ワゴン,トラックの派生車を早期より展開し,馬の居ない馬車から乗用車への改善が図られた。フォードは前半の大量生産と機能的な改良に成功するが,後半に自ら作り出したユーザーの多様な感覚的な要求や市場の対応に失敗している。年表で形態の経緯をみると,モデルは変動世代と継承世代に大きく分けられる。この時代のフォードの形態は変動世代の19種の側面画により代表され,5期に区分できる。側面画の直線プロポーション画を作成し,側面画との同定アンケートを行った。高い正解率となることから,この19のプロポーション画は,フォードと乗用車のイコン(原型)・アイコン(視覚象徴)の一種と考えられる。派生車別にプロポーションの変動要因を調べると,前半は機能的要因,後半は感覚・価値的な要因により主に変更されたと考えられる。