デザイン学研究
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有田・伊万里焼の「ワラ荷造り」の形態 : 陶磁器の伝統的ワラ包装技術と形態に関する研究(1)
宮木 慧子
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1998 年 44 巻 6 号 p. 11-20

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抄録

近世以降, 陶磁器の流通活動における包装は, 伝統的にワラを用いた「ワラの包装」が全国的に行われていた。「ワラの包装」は段ボール包装の開発で戦後衰退したが, 段ボールの原料である木材資源そのものが枯渇化する今日, 伝統的に継承されてきた「ワラの包装」を新たな視点で再考していく必要もある。本研究はその第1報として, 有田・伊万里地区の包装加工システムと形態を考察し, 次のような内容を明らかにした。1)造形に関しては, 「輪巻き」と「小口切り」という2タイプに大別されるが, 特に「輪巻き」の造形に, 有田焼の威信を象徴する, 誇張ともとれる強調された意匠性が確認された。2)近世以降, ワラ荷造りは専門職である荷師によって行われた。保護機能を重視した美的なワラ荷造りの形態特性は, 伊万里を拠点に, 陸上運搬はもとより海上輸送における長距離, 大量輸送用包装として発達したと考えられる。

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© 1998 日本デザイン学会
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